「ありがとうございました。ここまでしたんですから、くれぐれもこのことは他人には口外しないでください。」
「わかりました。ただあの写真は削除したんですけど……」
そう言いながら男が前の座席をゴソゴソと探り始める
女は男が何をしているのか理解できずにボンヤリと大嫌いな男の指がバックミラー付近に取り付けられた機械からメモリーカードらしきものを抜き取る様子を見つめる
「これ、最新のドライブレコーダーで暗い場所でも相手の車のナンバーがわかるぐらいの高感度のやつです。まぁ、今回はカメラが車内に向いてましたけど。」
女は男の言ってる意味が全く理解できないようでその場で固まり、指先一つ動かす気配もない
唯一、女の瞳だけが色をなくしたように暗く暗く沈んでいき焦点をあわせることなく宙を見つめる
頭の中でまるで他人の言葉のように女自身の声が響く
これは自分に対する罰だ
主人を裏切り、家族を裏切り、不倫相手のことも都合よく利用していた自分に対する罰だ
自分は幸せな日常なんて望んではいけない女だ
なぜ自分は幸せな日常に戻れると勘違いしたのだろう
一番汚く下品なのは目の前の男ではなく自分だったんだ
この男はそんな自分に罰を与えてくれる人だ
この人に汚されることで自分の汚い部分が許されるのかもしれない
「俺が言いたいことわかりますかね?」
女の唾液で濡れた下半身を露出したままの状態で、ニヤニヤとメモリーカードを毛で覆われた太く短い指で弄ぶ男
その男の目の前で後部シートの上にきちんと正座をして座り直し、三つ指をついて深々とお辞儀をする女の姿があった
「こらから、よろしくお願いいたします」
そう丁寧に挨拶する女の口の中には、ドブのような男の精液の臭いが蘇ってきた
Fin
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