陽子は駅から電車に乗り職場である診療所に向かっていた。
【おかしい。今日は休みのはずだが・・・】
少し離れて後をつける淳は物陰に身を隠しながら陽子の後を追った。
【バスに乗られたらマズイな】
そんな心配をよそに陽子は駅を出て暫く歩くとスーパーに入り、買い物袋を一つ持って店から出てきた。
【なんだ?こんな所で買い物か?まさか勤め先の医者にめしでも作ってやるのか?家政婦じゃあるまいし】
適度に距離を取りながらまた暫く歩くと勤め先の診療所に着いた。
陽子はためらいもなく自然に診療所の入口に消えていった。
淳は入口にまで来ると看板を確認した。
『木曜日 土曜日午後 日曜祝日休診』
木曜日休診・・・
淳の心に嫌な胸騒ぎがした。
淳は診療所の壁づたいを歩くとブロック塀に木戸が付いているのを見つけた。
そっと横に動かしてみると「スズッ」と小さな音を立てて横に動いた。
【開いた!この中でいったい何が・・・】
素早く木戸をくぐると後ろ手で戸を閉めた。
暫く動きを止める。
物音や話し声は聞こえない。
【よし、誰にも見つかってない】
淳は足音を潜め壁と建物の間を窓を探して歩いた。
少し進むと小窓が開いているのを見つけた。
小窓の下で動きを止める。
微かな話し声が聞こえる。
「すまないな、いつも。そっちの家の方は大丈夫なのか?」
「えぇ、大丈夫。今日も仕事だから。すぐ作っちゃいますからちょっと待ってて下さい」
女の声は陽子だ。
【やっぱりめしを作ってやってるのか?そう言えば奥さんが亡くなったとか言ってたな。それでめしを作ってやってるのか】
小窓から味噌汁の匂いがしてきた。
【うちの匂いと同じだな、しかしなんでめしなんか作りに来てやってるんだ】
淳の心の中に小さな嫉妬と怒りの感情が芽生えた。
「うん、うまい。どれも本当にうまいよ。こんなにうまい料理を食べられるなんてありがたい事だ」
「そう言って貰えると嬉しい。うちじゃなんにも言って貰えないから」
「そうなのか、それは良くないな。こんなに美人で料理がうまいなんて申し分無いのにな」
【なに言ってやがるこの男は】
自分の妻が誉められている事に淳は苛立った。
「いや~うまかったよ。ごちそうさま」
「じゃあ洗っちゃいますね」
食器を運ぶ音に続いて水の流れる音がした。
きっと洗い物をしてるのだろう。
淳は息を殺して聞き耳を立てた。
水の流れる音がして少したった頃。
「あっ、先生、ちょっと待って。まだ洗い物が・・・」
【なんだ?何が起きてるんだ!】
小窓は淳の背よりも高く、そこから中は確認できない。
布の擦れる音が中から聞こえる。
「あっダメ。ううっ・・・こんな所じゃいや・・・」
中から陽子の荒い息が聞こえる。
暫くすると水の流れる音が止まった。
そして小窓から足音が遠ざかるとやがて何も聞こえなくなった。
【何だ?何がどうなってるんだ?】
脈拍が早くなり呼吸は浅くなる。
頭に血が上り冷静に物が考えられなくなった。
淳は周囲を見渡す。
少し先に坪庭のような小さな空間を見つけた。
物音を立てないように淳はゆっくり歩みを進めた。
建物の角からそっと顔を出すとそこには大きなガラス窓があった。
中には机と椅子がふたつ、仕切りのカーテンなどが見えた。
【診察室か?】
もう少し顔を出してみる。
部屋の端に診察用のベッドが見えた。
その上には・・・
足を開き顔は天を仰ぎ目を瞑る陽子の姿が。
そして開いたスカートの中に頭を突っ込んだ男の後ろ姿が目に入った。
一瞬にして全身の血液が頭に集中するような、いや、むしろ全ての血液が頭から流れ落ちたかのような・・・気が遠くなるような気分の中、淳は壁に手をつき、やっと体を支えていた。
【陽子・・・何をしてるんだ!】
男の頭が動くたび陽子の口元が歪む。
やがて男は陽子のお尻に手を回すと呼応するかのように陽子は腰を浮かせた。
男は陽子のパンティーを引きずり下ろすといっそう激しく頭を揺らした。
きつく結んだ陽子の口がだらしなく開き始める。
おそらく開いた口からはあえぎ声が漏れているのだろう。
【クソッ、踏み込んでぶん殴ってやろうか】
淳は拳を強く握りしめた。
男は陽子の股間から顔を離すと何かを陽子には語りかけた。
恥ずかしそうに頷く陽子。
陽子は床に立つと背中のファスナーに手を回し、腰の位置まで下げるとワンピースがヒラリと足元に落ちた。
男の前に立つ陽子が身に付けているのはいつか洗濯籠の中で見たあのブラジャーだった。
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