カオリさんは真剣な眼差しでこちらの出方を伺っている。
「どうしたんですか、いきなり。」
急に下を向き、悲しそうな表情で何かを考えているカオリさんを見ているとなんだか触れてはいけない部分がある事を感じた。長い沈黙が続く。いや、実際にはそこまで長い時間ではなかったはずだが、短時間にいろいろな事を考えていると、時間の感覚が崩れるらしい、
「本気ですか?」
沈黙に耐えきれず、思わず仕掛けるような発言をしてしまう。涙を浮かべたような潤んだ瞳でこちらを見返すカオリさん。そして小さく頷いた。
(まじかよ…。いや、これは何かの罠なのか?)
思わず周囲を見渡す。いつものように整然と片付けられたリビング。ソファに向かい合うように座る2人以外に気配はない。自分でも信じられないようなスイッチがどこかにあったのだろうか?おもむろに立ち上がると向かいに座るカオリさんの隣に移動し、その肩に触れていた。
カオリさんは硬直したように身体に力が入っている。そしてゆっくりとこちらを見上げた。
(やばい。可愛すぎる。)
年齢的には確か5歳くらい歳上で、いつも優しく温かく接してくれるカオリさんに、多少の恋心を抱いていたことは事実だ、しかし、今こうして目の前で、しかも肩に触れながら目を合わせてしまうと、それは恋ではなく、雄としての本能の部分が働き始める。そのまま、2人掛けのソファーの横に腰を降ろした。
カオリさんもこちらから目を離さず、何か訴えるような表情でじっとしている。
(もう止まらない。)
顔を近づけるとそっと目を閉じて、唇を差し出すように、ほんの少し上を向いた。肩に添えた手を反対の肩に伸ばしながら、唇を重ねる、一回、二回、三回とゆっくりキスを重ねる、次第に少し緩んできたその唇は柔らかく、甘い味がした。カオリさんの左肩に回した左手に少し力を込めて、身体を引き寄せる。軽く舌を差し出すと、んっという、声とも言えないような息遣いでカオリさんも舌を少しだけ出してきた。
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