近くに停まっていたタクシーを拾って、えり子さんは「山田町の方へ。」と運転手に告げた。そこはラブホテル街で有名で、まさか自分が行くことになるとは。
タクシーの中では、彼女は静かだった。ついさっきまで、うれしそうに腕組んで歩いてたのに。運転手の目があるからだろう。
「童貞もらえん?私に任せて。」、この言葉が僕をかなり楽にしてくれていました。こっちは白状した身です。後は、彼女任せればいい。彼女に教わればいい。
そんな他人任せな気持ちが、僕を楽にしていました。
「ホテル街ですか?」、町に入った運転手さんが僕達に聞いて来ました。「うん、そう。」とえり子さんが身体を起こして答えます。
ホテル街に入り、徐行しながら「どこか空いてる?」と運転手さんと探しています。金曜の夜です。
ホテルが見つかりました。「ありがとう。」と運転手に告げ、「降りよ?」と僕に言います。途端に腕を組んで入って行きます。
お客の車が何台も見え、僕もいよいよそんな場所に来てしまったかと考えます。
部屋に入りました。もう、先程までの心の余裕など完全に消えました。部屋の中央で棒立ちの僕に対して、彼女は馴れたように準備を進めます。
カーディガンを脱ぎ、テーブルにバッグを置いて、部屋をウロウロと歩き、テレビのリモコンでスイッチを入れます。
一連の動作で、馴れているのが分かります。そのまま風呂に消え、すぐにお湯が入る音が聞こえて来ました。
彼女は冷蔵庫から飲み物を取り出し、棒立ちの僕を見て、「そんなに緊張しないのー。こっち座りなさいよ。」と声を掛けてくれます。
並ぶようにソファー腰掛け、差し出された飲み物を飲みます。間がもたないので、缶は手放せず、手の中でずっと転がり続けます。
おもむろにチャンネルが変えられ、アダルトに切り替わりました。ちょうど熟女物で、バイブで責め立てられていました。
隣の彼女はどんな気持ちで観ているのか?そんな事を思うと緊張してしまいます。
「ねぇ?キスしよか?」、彼女が言ってきました。焦ります。「キスの経験はある~?」と聞くので、「ないです。」と答えます。
「そっか。なら、ちゃんとしょう。したら落ち着くから。」と彼女の背筋が伸びて、姿勢が正されました。覚悟を決め、僕も姿勢を直します。
胸に飛び込まれ、唇を奪われました。動かない僕の唇を、上から何度も彼女の唇が被せて来ます。抱き締められ、背中を彼女の手と指が触ります。
「うわー、俺いまキスしてるよー。」、心の中で叫んでいます。
一旦、彼女の唇が離れました。「どう?少し落ち着いた?」、彼女に聞かれたけど全然。僅か1分程度のキスで要領も少し分かりました。
「まだ~。」と言い、今度は僕から奪いにいきました。「もぉ~。」と言いながら、再び重なります。なんだろ?この心地よさは。
いつまでも出来るわ、これ。そんな感じです。身体は細いえり子さん。唇は、口紅のせいもありますが、厚目の唇です。
僕も少し落ち着いて来ました。落ち着くとは、このことかと思います。「落ち着いた?」と再度聞かれ、「うん。」と答えます。
彼女が唇を見ると、口紅が形を崩しています。きっと、僕の口にもついているんだろうなぁと思ってしまいます。
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