あくる日曜日、僕は教えられたとおりに楠本さんの家に向かっていた。夏の暑い日、町内の方は誰も外に出ていない。
楠本さんが出て来て、僕の顔を見て『先生、』と呼んだ。『言われた通りに遊びに来ました。』と言うと、彼女はうれしそうに迎えてくれました。
『暑いでしょ?』と言いながら、アイスコーヒーが出て来ます。『むちゃくちゃですねぇ。』と答えながら、飲みます。
しばらくして、僕の攻勢が始まりました。
『楠本さんって、おいくつ?』
『私?私、73にもなるのよ~。』
『73ですか。まだ全然いけますよ。キレイだもん。』
『なんか、恥ずかしいわぁ~。(笑)』
『ほんとほんと。僕でも口説きたいくらいですよ。』
『もぉ~、やめてよ~。(笑)』
と一気に和みます。今日の目的は、僕があなたに気があることを伝えること。そして、佐々本の爺さんより、彼女と距離を縮めることでした。
『なんか、困ってることある?せっかくだから、何でもするよ。』と聞いてみた。楠本さんは、『別にないかな。』と返事をする。
少し時間をおいて、『あっ、お願いしていい?ホームセンターに肥料買いに行きたかったの。忘れてた。忘れてた。(笑)』と言い出した。
『最初から、素直に言えばいいのに~。』と思いながらもこれはチャンスだ。『行きましょう。ついでに、ゴハンも食べて帰えろ?』と連れ出すことに成功。
彼女は日除けに帽子を被り、一緒に家を出た。
ホームセンターで肥料を買い、レストランで食事を済ませ、『何か買おう』とデパートに行った。僕は手を繋ぎ、人混みの中引っ張って行った。
帰りの車の中で、『面白かった?』と聞くと『ひさしぶりにお買い物したって感じ。(笑)』と喜んでくれた。
空も暗くなり、いろいろ買い物をした僕達は荷物を下ろす為に彼女の家の前に車をつけた。運び込んでいると、一人の男性が近寄って来た。
佐々本の爺さんだった。音を聞いて駆け付けてきたのだろう。楽しかった雰囲気が一変してしまう。『買い物行ってたんか?』、その言葉がもう怪しんでいる。
楠本さんも、にがい表情に変わっていた。荷物を全て運び込み、ここは正念場だと覚悟する。
『うん。二人で買い物行ってた。』と言い、彼女の手を取って『家、入ろ?』と家に入った。佐々本の爺さんは、どんな気持ちだっただろうか?
楠本さんは、浮かない表情だった。気持ちはわかる。しかし、僕も引き下がれない。帰ってしまえば、きっと佐々本の爺さんが、この家に来る。
これだけは避けたかった。『車、おいてくる。』と外に出ると、爺さんはまだ立っていた。『楠本さん?車、置いてくるわぁ。』と聞こえるように言った。
爺さんとは目も合わせずに、駐車場に向かった。
再び帰って来ると、佐々本さんの姿が見えない。『もしや!』と思い、彼女の家に入るが爺さんの姿はなかった。諦めて帰ったのだろう。
『ただいま。』と楠本さんに声を掛けた。やはり、どこか暗らかった。荷物を片付けながら、話をする。
『佐々本さんのこと、気にしてる?』、彼女は返事をしなかった。『楠本さん?僕も譲れんから。楠本さん、好きやから僕も譲れんわ。』と言った。
彼女は更に考え込んでしまいます。
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