後日談〈私〉4
「……ん……ちゃん……志保ちゃん」
「はっ……ごめん……」
気付けば、私はいつの間にかお風呂から上がっており、ソファーにもたれていた。夫が子供達を寝かし付け、自らも寝る準備をしている。
「ねぇ、行く前の約束通り、今日……しようよ」
夫からの問いかけに、私はまた、ギクリとさせられる。そうだった。旅行に行く前に、帰った晩にエッチをする約束を、夫としていたのだった。
私は体力的にも無理だった……。数時間前まで違う男と何度も性交し、疲れきっている。だが、そんな理由絶対に通用しないし、第一、言える訳がない。
だけど、夫とする方が絶対に良いとも思っている自分もいた。……アリバイには丁度良い……。40歳を過ぎたとは言っても、妊娠のリスクはある。
今日、珍しく避妊せずに夫とセックスをして、中で射精すれば……万が一妊娠したとしても、誤魔化せるのでは……。
いやいや、普段夫とは避妊しているのに、突然今日、生でしようなどと、私から言えば、彼との出来事が、バレてしまうのでは……。
怖い考えが頭の中でグルグルと回り始める。どうしよう……。
「ごめん、今日は本当に旅行で疲れとうみたいやね……また、今度にしよう」
「……えっ……いや、その……」
私は急いで取り繕うとする。バレた……。いや、そんなはずは……。
夫が、おやすみと言って、寝室へ行こうとする姿が、何か不穏さを醸し出している気がした。
「待って、待って……」
そう声を掛けた瞬間、腹部に鈍い痛みが……。慌ててトイレに駆け込む。
「……大丈夫」
夫が心配そうに、ドア越しに聞いてくる。私は、ホッと胸を撫で下ろし、一度深呼吸をして、夫に告げる。
「大丈夫……生理が来たから……」
今夜はゴメンね……と付け加えようとしたが、止めた。
夫は残念そうな顔をしているのだろうか……。後ろめたさを感じた。しかし、その後で私は、安堵して、スマホを取り出し、彼にメッセージを、送信した。
(大丈夫……生理が来たから)
Fin
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