(5日目中盤②)
「今日の予定はどうするの?」
朝イチの営みを終えて、Yは薄く黄色がかったクリーム色のブラジャーとショーツを着用していく。
「予定?う~ん、途中高速出口近くにあったラブホいかない?」
私は、ボクサーパンツにジーンズとTシャツを手早く着ながら聞いた。
「あー、それは別に構わないけど。それまで何してるの?」
「構わないんだ(笑)」
「何が?」
「いや、Yにしては素直にラブホ行くの受け入れたな、って。」
「だって、行きたいんでしょう?(笑)」
Yは、デニムの膝丈くらいのスカートに白いデザインTシャツを着用して、昨日まで着用していた着替えを持ってきたバックパックに丁寧に詰め込んでいく。
最近まで女の悦びを一切知らず、セックスに対しては初(うぶ)な女だったY。
人付き合いはいいが、見た目は真面目な感じで性格も真面目な典型的な良妻賢母型だったYが、こんなに変わった。
多分、今の私の目の前にいるYは、女の悦びを知り、自分からセックスを求める淫乱な女に変わった。
きっと、今までのYを知っている人にとって、Yの裏にこんな雌の本能が隠されているなんて知る由もないだろう。
真面目な人程、タガが外れると、ビックリするくらいに変わる、とはよく言ったものだ。
この女は今やひたすら私からの愛情を求めている。
夫からのではなく、私からの愛情を。
そう思うだけで、私は下半身に疼きを覚えるのだった。
「で?それまではどうするのよ?」
荷物を全て詰め込んだYは改めて私に問いかけた。
私は、Yの言葉に現実の世界へと引き戻される。
「あ………。う~ん。そうだなぁ。とりあえず近くのファミレスで朝御飯食べる?」
「いいね、それ!私お腹すいちゃったよ!」
「女性は逝くと体力使うみたいだしね(笑)」
「それは男の人も同じじゃん(笑)」
「いや、でもYって底無しだよね(笑)」
「なんでー?」
「俺、一晩であんなにしたの初めてだよ(笑)」
「私だってそうだよー。」
「けど、途中Y止まらなくなってるし(笑)」
「そういうこと言わないでよ(笑)」
「Yも十分変態だよなぁ、と思いますが?(笑)」
「違うよー。大和さんにはかなわないよー。」
お互い笑いながら、私は車を発信させて、ガソリンを給油し、県道沿いにあるファミレスへと入った。
Yは洋風セット、私は和風セットを注目する。
ファミレス店内はお盆休暇で帰省してきたでたろう、家族連れが多数いる。
「本当なら……私も今頃あんな家族連れみたいに、主人の実家近くのファミレスに来てたんだろうな。」
「ん?もしかしてホームシック?(笑)」
「そりゃあ、ないって言ったら嘘になるかな。子供達は元気かなぁ、とか主人はちゃんと面倒見てくれてるかな、とか。気にしない人なんていないんじゃないかな。」
二人の会話は周囲の喧騒に飲み込まれていく。
私はYがお盆が終われば私の目の前からいなくなっていくつもりなんだろう、と直感した。
「なら、もう帰る?」
「ううん。今から帰ったところで遅いから。」
「今日いれれば、あと3日あるし、遅くないんじゃ?」
「そういうことじゃないの(笑)さ、この話はもうおしまい!食べよ、食べよ!」
と言いながら、Yは出されたスクランブルエッグにフォークをさした。
私はファミレスのトイレで、依頼主にメールを入れる。
「奥様が起きて早々誘ってきたので、朝から早速1回させていただきました。やっぱりセックスに夢中になってますね。ホテル行く話したら、ふたこと返事で乗ってきましたので、お昼過ぎにホテル行きますね。」
まぁ、早々誘ってきた、という一部誇大な表現もある
が、最終的に誘ってきたのはYだし、これは問題ないだろう。
ファミレスには二時間程滞在した後、T山付近の観光名所を巡りつつ軽い昼食を取り、帰宅路についたのは午後2時を過ぎていた。
私はT山に一番近い高速のインターへ車を向かわせ、インター手前にあるラブホテルの駐車場に車を滑り込ませた。
無人タイプのフロントでパネルから部屋を選ぶタイプだった。
お盆のお昼からラブホに来るカップルはあまりいないのだろう。
二部屋だけ使用中であり、後はパネルのライトが点灯しており入室可能であることを示していた。
私はYに
「久々だよね?好きな部屋選んでいいよ?」
と話しかけると、Yは
「う~ん、そうだなぁ…。」
と真剣な眼差しで部屋のイメージ写真を眺めていく。
ラブホテルの部屋選びさえも真剣に取り組むY。
やがて
「ここに決めた!」
とシックな雰囲気を醸し出す、アンティーク調の家具で飾られた501号室のパネルボタンを押したので、二人はエレベーターで5階へ登った。
部屋に入ると、部屋の案内の自動音声が流れる。
昼のサービスタイムで五時間の滞在が可能なようで、入口に設けられた自動精算機には
退室予定時刻 19:27
と表示されていた。
ドアを開いてベッドルームに入ると、灰色の二人掛けソファーの前にガラス製テーブルが置かれており、どこにでもありそうなありきたりな部屋の構造だった。
「あー!くたびれたぁ!とりあえずシャワー浴びたいかな。」
Yはソファーに勢いよく座りこんだ。
私はYの隣に腰かけて
「先に浴びてきていいよ。」
と話しかける。
Yはすぐに
「え?一緒に浴びちゃおうよ?」
と言ってきた。
「え?いいの?」
「ん?ダメなの?」
「いや、俺はいいんだけど。Yは1人の方がいいのかな、って。」
「そんなことないよー。」
「そうか。じゃあ、一緒に浴びちゃうか。」
そう言って二人は立ち上がり、風呂へと入ることにしたのだ。
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