(二日目後半)
私はすぐにスマホにイヤホンを繋ぎ、会話内容を聞きもらさないようにします。
向こうはまだ車中なのでしょう、エンジン音の向こうに微かに聞こえるFM放送がより臨場感を際立たせます。
暫しの沈黙の後、車内にハザード音が響くと共に、エンジン音がアイドリング音に変わったところで、まずは妻の声が聞こえてきました。
妻「ようやく事務所に帰ってこれましたね。あー。今日は頑張った!でも、大和さんの連れていってくれたイタリアンで頑張った甲斐があったって思えました。今日は本当にご馳走様でした!」
大和さん「いやいや、あれが残業代の変わりということで(笑)」
妻「ウソー(笑)あれ、残業代だったって聞いてないですよー(笑)」
大和さん「冗談冗談(笑)ちゃんと残業代も払いますよ(笑)」
妻「よかったー(笑)」
会話が途切れ、車内に20秒くらいの沈黙時間の後に次に切り出したのは大和さんでした。
大和さん「…でさ……この後はどうするの?」
妻「………え?この後……って、普通に帰りますよ?明日も仕事あるんですよね?」
大和さん「まぁ、あるんだけどね。いや、そういうことじゃなくてさ。」
妻「いやいや、そういうことですよ(笑)え?まさか、まだ続きあるんですか?ないですよね?」
大和さん「いや…うん。ちょっとうちに寄ってかない?」
妻「いや、うちって、もう事務所着いたじゃないですかぁ (笑)何変なこと言ってるんですか(笑)」
大和さん「いや、うちってそうじゃなくて、俺の家だって。」
妻「いやいや。それ本気で言ってます?(笑)そんなことしたらゲスの極みになっちゃいますから、ダメですよー(笑)」
大和さん「ゲスの極みって(笑)いや、いたって俺は本気なんだけど?」
妻「止めて下さいよ(笑)私結婚してるし、子供もいるし(笑)」
大和さん「でも、今は独身じゃん?」
妻「独身って、意味が全然違う(笑)大和さん、ちょっと今日おかしい?(笑)」
大和さん「うん。おかしいのは分かってる。分かってて誘ってるんだけど。」
妻「ダメ。もしフライデーされたら大変だもん。」
大和さん「だから、俺の家ならYさんの家から距離あるし、誰も知り合いにも会わないよ。」
妻「そういうことじゃないんだよなぁ……。」
大和さん「じゃあ、どういうこと?」
妻「大和さんは仕事パートナーとしてすごい尊敬出来るから、やっぱりそこはきちんと線引きしないと。」
大和さん「うん。俺もそう思ってた。でも、Yさんも俺のこと若干誘惑してるでしょ?」
妻「誘惑って?」
大和さん「例えば、去年の秋くらいから薄着になったりとかさ。」
妻「あー(笑)変態だぁ(笑)だから、それは事務所が」
大和さん「本当に暑いだけが理由?それだけ?」
妻「それは……………。」
大和さん「ほら。答えに詰まってるじゃん(笑)だって、この前Yさんがお子さんとイ○ン言った時、ばったり会ったじゃん?あの日もすごい暑かったけど、Yさん下にキャミソール着てたよね?」
妻「そこちゃんと見てるんだ(笑)いやぁ……困ったなぁ…。うーん。全く試してなかった、と言われたら確かに嘘かもしれない。」
大和さん「でしょ?あれで何も感じてなければ、今日だって職業に誘ったりしな…」
妻「待って。聞いて。とにかく今日は帰る。いきなり、こんなこと沢山言われても困る。色々困る。気持ちが追い付けないもん。だから、今日は帰らせて。」
大和さん「じゃあ、明日は?」
妻「ちゃんと仕事は来ます。けど、今日は家に帰って考えさせて。ね?」
大和さん「分かった。ゴメンね。いきなりすぎて。」
妻「本当だよー(笑)今も実際かなり動揺してますから(笑)帰り事故起こしたら大変じゃん(笑)」
大和さん「それは大変だ。家まで送ろうか?」
妻「いや、大丈夫(笑)てか、とりあえず今は大和さんと離れないと(笑)」
大和さん「あ、そっか(笑)うん。分かった。じゃあ、気を付けて、お疲れ様でした。」
妻「お疲れ様でしたー!」
そしてドアが開き、妻が車から出ていく音が聞こえた後しばらくたち、電話口から大和さんの声が聞こえました。
「明日、決めにいきますね。」
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