(エピローグ)
大和さん「こちらが録音したデータです。」
大和さんはレコーダーを私の前にさしだした。
9月の中旬、私は大和さんとS駅前の喫茶店で会っていた。
私は大和さんからレコーダーを受け取りお礼を言う。
私「ありがとうございました。本当に色々と。仕事も穴を開けてご迷惑もおかけしてしまって……。」
大和さん「いえいえ!迷惑だなんてとんでもないです!こちらこそありがとうございました。」
お盆休み最終日のあの日、用紙を落とした私が振り向くと、玄関に妻が満面の笑顔で立ちながら、子供達の出迎えを受けていた。
妻「一郎、次郎、三郎!おかえりー!」
子供達「ママおかえりー!」
妻「ただいま!ばあばの家、楽しかった?」
一郎「うん!楽しかった!」
妻「そうなんだ、良かったねー。で、宿題はちゃんとやった?」
一郎「ん?やってない!」
妻「なにやってんの!?夏休みあと少ししかないじゃん?」
一郎「う……明日からやるよ。」
妻「ちゃんと見るからね。次郎は、楽しかった?」
次郎「うん!でもママと一緒に寝られないのは寂しかったかな。」
妻「今日からまた一緒に寝れるね!三ちゃんもただいまー!」
三郎「おかいりー。ママ抱っこ。」
妻は三郎を抱き上げながら、リビングに入ってきた。
妻「パパおかえり。」
私「ただいま…」
妻「何驚いた顔してんの?」
私「いやぁ……」
妻は床に落ちた用紙に目をやり、笑いながら
妻「ちゃんと注文してくれた?(笑)」
と言った。
私が手にした用紙には妻が手書きで
サーモン×4
いくら×2
穴子×2
いか×1
たこ×1
と書かれていた。
私「てか、何でこの紙に書いたの?」
妻「なに驚いてんの(笑)パパびびってんのー(笑)」
私「いや、びびるだろー!(笑)」
妻「びびりすぎだって(笑)で、夕飯はお寿司なんでしょ?」
私「うん。今から注文するよ。」
妻「パパのお小遣いからだよね?」
私「いやいや、え!?なんで!」
妻「ケチー(笑)さ、早く注文しちゃってよ。お腹すいたよ。」
私「分かった。1週間仕事どうだった?」
妻「ん?仕事辞めてきた!」
私「え!?なんで?」
妻「んー。やっぱり仕事大変だと家族との時間がなくなっちゃうからねー。だから、辞めてきた!」
私「突然過ぎて迷惑じゃないか?」
妻「迷惑だろうけど、所長も納得してくれたし、もう辞めちゃったし。」
私「そうなんだ。そんな大変だったの?」
妻「別に仕事は大変じゃなかったけどさ。でも、もうこの話はいいじゃん。おしまい!それより夕飯!」
私「そっか。分かった。」
大和さん「いや、正直に話せば、私ちょっとだけ奥様狙ってましたよ。でも、やっぱり奥様はご家族を選んだんです。退職届を出された時はショックでしたけどねぇ。」
大和さんは笑顔で頭をかきながら続ける
大和さん「でも、ご主人の願い通り、奥様は変わったと思いますよ。絶対。」
その通りだった。
妻は、家庭に戻り、以前と変わらない妻と母の顔にきっちりと戻っていた。
ただ一つ変わったことは、生理期間を除いて、妻の選択前のショーツを見ると、毎回女の染みの痕がついているのが分かる。
ひどい時はぐっしょりと湿り気を帯びている時もある。
恐らく、1人になった時はオナニーをしているのだろう。
何より、以前に比べ、夜の生活も変わった。
以前ならば正常位でしかさせてくれなかったのが、今の妻は自ら私の上にのり、上手く腰を動かして逝くようにもなった。
私は妻に
私「誰かとしたの?」
とカマをかけたところ、妻は
妻「してないよー。また、そんなことばっかり言ってる。」
と否定してくるが、それがまた私を興奮させるのだ。
そういう意味では、妻は大和さん好みの女に生まれ変わったのだと思うし、私は大和さんに妻を寝取られたことは間違いないと思う。
ただ、妻は母としての自分を最も大切にしてるのだということも再認識させられ、私はより妻を愛するようになった。
大和さんは私に
大和さん「奥様、本当にいい女性でした。仕事の面も含めて。ただ、私に出来るのはここまでです。これ以上私が諦めずに何かやると、今度は寝取りじゃなくて、犯罪の話になってしまいますし、それは私もご主人も、何より一番大切なYさんも傷付けることになるのは私には絶対出来ませんから。」
私「そうですよね。今回の話、大和さんにお願いして良かったです。」
大和さん「そう言ってもらえるだけで、私も嬉しいです。あ、奥様のLINEも消しましたし、録音したデータもご主人に全て渡したので、私の手元にはもう何もありませんから、心配しないで下さいね。」
私「全然心配してませんよ。大和さんの人柄分かってますから。」
大和さん「ありがとうございます(笑)さて!私はそろそろ行きますね。どうぞ奥様を大事になさって下さい。」
私「ありがとうございます。会計は私がやっておきます。」
大和さん「では、お言葉に甘えさせていただきます。ご馳走さまでした。いつまでもお元気で。」
そう言って大和さんは店を後にする。
私は大和さんの背中を喫茶店の中から見守る。
それが、妻を夢中にさせた男性との最後の別れであった。
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