オフィスに到着した私は昨日のクレームの対処等について上司へ報告し、クレーム原因となってしまった島根を連れて取引先へ謝罪に向かうことになった。
プロジェクトの責任を任せられるようになってからは謝罪行脚の日が多くなっているが、こうして会社に責任を持たされる仕事をさせてもらっている以上、仕方ないことだと諦めている。
今回謝罪に訪れた先の社長はイベント関連の運営を手掛けており、私の会社は招待客に関するデータベースをまとめるプログラムを受注していた。
社長は50半ばの吉田という紳士的な男性で、私が謝罪に訪れた時にミスをしたのはこちらであるにも関わらず、ミスをした島根を励まし、今後も取引を続けてくれると言ってくれた。
私は島根と共に取引先を後にし、会社に戻り、上司に報告を終えた後、島根と昼食を食べに出掛けた。
島根を励ます意味で昼食をおごり、会社に戻り喫煙所に行くと、同期の藤田と出くわした。
この藤田という男が以前、奥さんの不倫を疑い、家の中にスパイカメラを仕掛けた男だった。
私「よぅ、藤田。お前んとこ最近成績いいな。」
藤田「おぅ、Kか。そうだなぁ、最近人事からうちに移ってきたやつが、人事に戻りたいのか、仕事いっぱい取ってきてな。おかげでこっちも休みなしだよ。」
私「そうかぁ。まぁ、俺なんかは、そっちが取ってくる仕事のおこぼれから貰えてる仕事もあるから、大分助かってるけどな。」
藤田「悪いと思ってるよ。ただ、やっぱり得意分野の違いはあるからさ。俺のとこだけじゃ手に負いきれない仕事は同期のお前を頼りにさせてもらってるよ。」
私「いや、それで俺も助かってるんだから一切気にするな。それより…さ。」
私は周囲に気を使いながら、藤田にささやくように続けた
私「藤田が前の奥さんと別れる時に使ったカメラ、あれって実際どうだったんだ?」
藤田「え?K、お前まさか……」
私「いや……あまり詳しくは言えないんだが…」
藤田「そうか、分かった。今日お前何時上がりだ?」
私「一応昨日は夜遅かったから今日は定時で上がるつもりだ。」
藤田「分かった。俺も今日は金曜だし定時で上がる。じゃあ、一階のエントランスホールで落ち合うか。遅くなるようならば連絡をくれ。」
私「ああ。分かった。」
そう言って藤田と別れ、私は喫煙所を出てオフィスの自席に戻った。
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