「今日は何?」
健二は少しぶっきらぼうに、そう言いながらソファーに座った。
「・・・オレンジジュースよ・・・みんな好きって言ってたでしょう?」
氷を入れたグラスにジュースを注ぎながら、どうしても上ずってしまう声を我慢しながら答える。
全部に注ぎ終わり視線を上げると、健二は無言でソファーに座ったまま、こちらに振り返って睨んでいた。
急に心が弱くなり、ソファーに駆け寄る。
フローリングの床に膝をつき、健二の右膝に両手を添える。
「・・・ごめんなさい」
そう言うのが精一杯だった。
なぜなら、その質問の意図が真季には理解できていない。
今日は何?の一言には主語も意図も明確ではなく、まだ始まってもいない行為に何かの失敗があるはずもない・・・そう思ったが、そうではなさそうな雰囲気。
まるで大人と子供が逆転したような・・・不機嫌な雰囲気に理由なく怯える幼子のように、理由を聞くことさえ怖く感じるほど真季は怯えた。
「あの・・・えと・・・」
困った顔をして、情けなく眉をすぼめて、今にも泣きそうな顔をして、、、なのにどうして良いかわからなくてオロオロする人妻に、健二はため息をつきながら話した。
「・・・なんで、そんなカッコしてるの?」
その一言で理解した。
怒られたくない相手が怒っている理由を理解した。
不機嫌になって欲しくない相手が不機嫌な理由、嫌われたくない相手に嫌われそうになっている理由を理解した。
だから笑顔になってしまって、失敗したと自分でも思った。
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