「『人妻 玲子の白日夢 夜の遊園地』は、これで終わりです。ご清聴、ありがとうございました。お楽しみいただけましたでしょうか?」
観客から、パラパラと拍手の音が上がり、最後は10人全員からの拍手を受ける。
「菅原さ~ん。」
私は奥の間に控えている菅原に声をかけ、未だ誰1人アイマスクを外さない観客のところに近づいていく。
「ありがとうございました。」
一人ひとりの頬に、お礼の気持ちを込めて、口づける。観客はどう思っているのか、その表情から窺うことはできない。誰も言葉を発することなく、身じろぎもせず、私の唇を受け止める。
観客の見送りは菅原に任せて、私は奥の間に引き取る。
。。。終わった。。。
アクシデントはあったけれど、心配したようなこともなかった。無事に朗読会を終えることができた安堵感で、私はヘナヘナと座り込み、ウォッカ入りトマトジュースを喉に流し込む。
「玲子さん、お疲れ様。お客さん、皆帰られましたよ。」
「どんな感じでした?」
「出しちゃってますからねぇ。帰りは、皆さんわりとそそくさと、という感じでしたが、朗読会の最中は熱気がすごかったですよ。」
「熱気?」
「私、控室のドアを開けておいて、会場の様子をずっと見てたんですよ。万が一のことがないように。玲子さんは朗読に没頭していたし、お客さんはアイマスクしてたから見えませんしね。そしたら、後ろから見てても、お客さん達の集中が凄くて、怖いような空間になってましたよ。」
「良かった。なら楽しんでもらえたのね。」
「そうでなきゃ、こんなことにならないでしょう?」
菅原は、笑いながら、あのビニール袋を持ち上げる。
「一瞬、どうしようかと思ったんですけどね。危険はなさそうな感じだったし、玲子さんも落ち着いて対応してたから、黙ってました。すみません。それにしても、ラストシーン変えちゃったんですね。あそこからの展開、好きだったんだけどなぁ。。」
本来の作品では、アリス倶楽部の7人の男達が達した後、ギャラリーの男達も乱入して、さらに玲子は墜ちていく、という流れのはずだった。
「お客さん、もうイっちゃってたから。逆効果かな、って思って方向転換。」
「私は、まだ......。」
「え?」
菅原が私の肩に手をかける。
「あのシーンがくるまでとっておいてたんですよ。玲子がさらにめちゃくちゃに犯されるシーン。。。」
「す、菅原さん?!」
そのまま、ぎゅっと抱き締められ、私は動きを封じられてしまう。
「本当のラストシーン、読んでください。わかってますか?私は貴女の作品の一番のファンなんです。でなければ、朗読サイトを立ち上げたりしません。貴女の作品が送られてくると、私が最初に聞くのです。身体を、こう、熱くして。。」
菅原は私の手を、自分の昂りに導く。
そこは既に、熱く、硬く、大きく存在を主張している。。。
(続)
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