あとは、最終章だけ。
ずっと声を出し続けているので、喉が渇く。私はペットボトルの水ではなく、自宅から持ってきていた水筒に手を伸ばす。
それにはウオッカをまぜたトマトジュースが入っている。
アルコールの力を借りて、アリス倶楽部の椅子に磔にされ、あえぎ続ける玲子の声が出せるよう、自分に暗示をかける。
水筒に口をつけながら、観客の様子をうかがう。誰一人、言葉を発することなく、私の次の言葉を待っている。
沈黙の熱気。。。
アイマスクをした男達の脳裏で、玲子は......、私はどんな痴態を晒しているのだろう。。。?
小説の中の、マジックミラー越しに玲子を見ていた男達と、今、私を取り囲んでいる10人の観客のイメージが重なってくる。
あ。。。見られている。。。
見えない視線に焦がされて、私の身体の奥底に潜む欲望の火が広がっていく。その熱を燃料にして、私は最終章を読み始める。
(続)
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