音をたてないように慎重に、鉄の非常階段を一歩ずつ進んだ。
1フロア上がるたびに体を隠し、防火扉のノブに手をかけた。
ゆっくりとノブを回し、息を止めて廊下を覗いた。
居て欲しくないと思いながら、居て欲しいと思いながら進んだ。
2階は鍵がかかっていた。
3階は誰もいなかった。
そして人気のない、閉鎖された雑居ビルで、扉から光を漏らしている部屋をみつけた。
廊下をどう進んだのかは覚えていない。
壁に背をつけて、時代劇の忍者のように歩いたかもしれない。
俺は光を漏らしている古い扉の隙間に、しがみつくように覗いていた。
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