まだ夕方たどゆうのに、妻はすっかり人気の無くなった路地裏を歩いていた。
おかげて尾行の距離は離れ、とうとう見失うかと覚悟した。
その視線の先で、雑居ビルの前で妻が立ち止まった。
白い外壁が雨の水アカで黒ずんだビルだった。
妻は前後をキョロキョロと確認し、コートの前をギュッと握ってから消えた。
急いで雑居ビルを目指した。
玄関にある両開きのガラス扉のノブにはチェーンが巻かれ、南京錠がかけられていた。
俺はウロウロと歩きながら可能性を探し、ようやく雑居ビルと隣のビルの隙間に入った。
ブロックとコンクリートに挟まれた、1メートルもないビルの隙間。
そこには雑草の生えた・・・けれど、最近も何人もの人が歩いた痕跡が残る道があった。
ビルの裏側まで進むと、すこし開けていた。
そこには生茂る雑草と、鉄の非常階段があった。
俺は足音を立てないように慎重に、アゴから落ちる汗も気にせずに歩いた。
※元投稿はこちら >>