土曜日、私の運転で男の家に向かった。男の名は冨樫雄一、日本最大の製薬会社の会長だと知った。美優紀の案内で昼前に冨樫の豪邸にたどり着いた。
「いらっしゃい、よく来てくれましたな」がっしりとした冨樫は隙のない男だった。後ろには冨樫の妻で痩せた初老の女性とその横には由真が立っていた
「お招きありがとうございます」
「遠いところわざわざすいませんでした」冨樫の妻が深々と頭を下げる
「光希ちゃん、こんにちは」由真が笑顔で手を振った
リビングに通されると、冨樫の愛人のミクと三人のメイドが深々と頭を下げた
「紅茶を用意しました」リビングには英国のアンティークの装飾で統一されていた
「私はイギリスに留学したことがあるので、その時の恩人からいただいたものがほとんどです」回りを見回す冨樫
「素敵ですわね」優子があわせる
「えーと、美優紀さんのお母様だったかな」
「失礼しました、美優紀さんのお母様の優子さんです」私が紹介した
「宜しくお願いします」優子が頭を下げる。
「宜しくお願いします」冨樫の妻が微笑んだ
「子供たちには紅茶にミルクを、私はブランデーを少々、紀之さんと優子さんもそれでよろしいかな」
「はい、お願いします」
「パパ、わたし光希ちゃんの隣いっていい?」
「あら、仲良しね」優子が立ち上がった。私と光希の間に由真が座った。二人はじゃれあいながら座り、由真が光希に耳打ちした
「そんなことないよ~、パパ、由真ちゃんがカッコいいって」光希がいたずらな視線を投げた
「やだ~、光希ちゃん」由真の白い肌がほんのり紅く染まった。
「パパ、挨拶の握手してあげたら」
「そんな」由真が更に紅くなった
「そうだね、光希の父です」
「はい、よろしいお願いします」由真が差し出した手は冷たかった。その手を暖めるように私は両手で包んだ。由真の動きが止まり、少女は私を見つめた
「私も由真ちゃんのパパにしよっと」光希は大胆にも冨樫に抱きつき、そして頬擦りした
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