「パパ、ママね、男の人に声かけられてたよ」翌朝娘が中学の制服に着替えて私に耳打ちした
「背が高くて、高そうなスーツ着てた。時計も高そうなやつ」娘の観察眼に驚かされた
「わたしが、ママって近づかないともしかしたら…」娘が手を出した
「危機一髪を救ったってことで、お小遣いよろしく」
「そんなことだろうと思ったよ」私はしぶしぶ1000円札をわたした
「もうひとこえ」
「なに買うんだよ」私は更に二枚わたした
「ありがとう、パパ大好き」娘は私に抱きついた
「もう、遅刻するわよ」
「はーい、いってきます」娘はパンをくわえて出て行った
「ママ、男に声かけられたんだって」
「もう、あの子ったら。道をきかれて、その後世間話しただけよ」
「そうか、あいつにいっぱいくわされたな」
「パパってほんと恵に甘いんだから」後で知った事だか、すでにこの時、妻は男から名刺をもらっていた。とある不動産会社の専務、そう光之の名刺を
「今度の金曜友達の家に泊まりに行ってくるよ」
「どうぞ、あまり飲み過ぎないでね」
「ああ」意外にすんなり了承されてあっけなく感じた。
家を出るとき妻は妙にケータイを気にしていた。一度ドアを出て、わざと忘れ物を取りに帰ると妻は通話に夢中になっていた
「そんな、ふたりでお会いするのは…」
「金曜ですか、ええ、主人は留守みたいですが」私はわざと音をたてた
「すいませんちょっと」妻があわてて私の所に来た
「ちょっとケータイ忘れたかなと思ったらポケットに入ってた」
「しっかりしてください」
「ああ、それじゃ」
出掛けに妻をのぞき見ると、笑顔でケータイで話し始めた。
「ばい、金曜に」聞き耳をたてるとその言葉が微かに聞こえた
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