背肉に甘く鋭い痛みが走る
昔、自分がまだ十代だった頃の記憶がイメージの奔流となって脳裏に流れ込む 由美と知り合った三十代半ばまで、奥底に仕舞いこみ鈍鉄の蓋で押さえていた記憶
物心付いた頃から、母一人子一人の家庭だった まだ若く美しかった母は夜の仕事で自分を養っていた 年月を重ねた今なら、その苦労は計り知れないものだと理解するのだが 自分はまだ幼かった
酒を飲まされてフラフラで帰宅し、華美な夜の服装のまま倒れ込む母 時には店の客を連れ込み、襖一枚隔てた向こう側で絶頂していた母
そんな母でも、母は母 真夜中に水や胃薬を用意したり、客との性交に気付いても襖を開けず、密かにベランダから小庭に向かって尿意を解消したりしていた
嫌で堪らなかったのは、運動会や遠足だった
真夜中まで働いていた母でも、催事の際にはお弁当をこしらえてくれた だが、周りの友達のお母さんのような見栄えのするカラフルなものでは無かった 子供同士というものは残酷で、当然馬鹿にされた
力しか無かった 暴力で黙らせるしか無かった
荒んだ自分は、十代半ばで家を飛び出し、バブルの頃は景気も良かったので、アルバイトでなんとか生計を立てていた
十代で有ることを隠して、夜の街の隅で生きていた頃、偶々に住んでいたアパート横のコンビニオーナー女性と話す仲になっていた
境遇もついつい話してしまった オーナーはこんな自分に優しかった 身体を交わす仲になるまでは
オーナー女性は所謂サディストだった 若い自分の身体を傷付け、陵辱し、幾ばくかの代償を自分に恵んでくれた この上無い屈辱を覚えながら、いつしか身体はその責め苦に快楽を感じていた
生きる為には仕方なかった
あの頃の記憶を、由美の爪が引き摺り出したのだ
自分を玩具のように扱った、女性達 そして、その原因を作った母
暗く重たい感情が自分を支配していた
「由美さん、恥ずかしくないの?」
「!?」
快楽に身を捩らせていた由美が、我に帰る
「こんなの、息子さんや娘さんが知ったら どうなるのかな」
瞬時に淫蕩な女の顔から、母親の顔に戻
「さっきの動画、ネットに流しちゃおうかな」
続く
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