「ところで、圭佑君は夕御飯は何が良いの?泊まって行くんでしょう?」
紺色のスーツに首に巻かれている花柄のスカーフがよく似合っていた。「えっ?はい、僕は何でも…」心此処に有らずの状態で不意打ちを喰った感じだ。「純也は何が良いの?」ペンで頭を掻いていた純也は面倒臭そうに「良いよ何でも…有るもんで」などと可愛げの無い返事をしていた。
「じゃ、受験頑張れるように、カツカレーにしようか?受験に勝つようにね」そう言うとおばさんは茶目っ気を見せるように右手の拳を上げた。「カツカレー食って受かるなら誰も苦労しないだろ」相変わらずの純也の言葉におばさんはは僕を見ながら笑っていた。
歳の頃は40代半ばほどか…軟らかい栗毛色のミディアムヘアーと言うのか、カールのかかっている髪が肩下まで伸びている。「じゃ、少し待っていてね」そう言うとおばさんは部屋を出ていった。
おばさんの作ったカツカレーと数品の副食を三人でテーブルを囲むようにして食べていた。学校の話や進学の話などをおばさんにしながらの至福の時間であった。夕食を済ませるとまた純也の部屋で問題集との格闘だ。書いては消し、消しては書く…その繰り返しだ。一方の純也は少し考えたかと思うとすらすらとペンを走らしている。
「なっ、純也…」夢中にペンを走らす純也に声を掛けた。「んっ、何?」ペンを止めたら純也が僕の顔を見た。
「おばさんて、大学出てるんだろう?何処の大学?」自分達には関係無かったがつい口から出てしまった。「お母さん?聖華だよ。何で?」純也は不思議そうな面持ちで僕を見ていた。
「せいか?せいかって?」
「聖華女子大だよ。」純也は何気なくおばさんの大学を教えてくれた。
「聖華女子大!?。それってあれか?頭脳明晰なお嬢様学校か?あの聖華か?」あまりの驚きにテーブルの上で前のめりになっていた。
(聖華なんて言ったら偏差値は70位かな…いや、越えるな。おばさんて凄いんだな)自分の頭の中で高嶺の花のような大学の事を考えていた。
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