薄暗い廊下の先にほのかに灯りの漏れる風呂場が見える。
勘兵衛の前を行く千鶴子の後ろ姿は、先ほどまでの嫁御としての彼女とはどこか違って見えた。
耳の後ろから垂れたゆるくうねる後れ毛。
着物の上からでも分かる膨よかな丸尻。
艶っぽい年増女の香りを漂わせていた。
脱衣場に入ると千鶴子は手慣れた様子でするりと勘兵衛の後ろにまわり、帯を取り着物の肩を摘んで丁寧に脱がした。
勘兵衛の浅黒く無骨な背中が露わになる。
千鶴子は前隠し用の手拭いを勘兵衛に渡すと、先に風呂場に入って待つよう伝えた。
「中の腰掛けさ座ってお待ちになって..後からすぐに参りますから..」
『奥さん、、あんたが湯女を?』
「はい..」
勘兵衛は風呂場の戸を開け、その通り椅子に腰掛けて待つことにした。
風呂場の中は立ち昇る湯気で真っ白に曇っていた。
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