『へぇっくしょん!!』
明朝、勘兵衛がくしゃみとともに目を覚ました。
したらばなんとしたことか、そこには千鶴子の姿どころか布団も屋敷すらもなく、だだ広く荒れた畑が広がっているだけだった。
ただひとつ、素っ裸の勘兵衛の尻下には皺くしゃになった赤い襦袢だけが一枚敷かれていた。
『どういうこった、、おかしな夢でも見てたんじゃろか、、にしてもこの襦袢は、、はて?』
勘兵衛はその襦袢を腰に巻きあたりを見回した。
少し離れたところに夫婦のようなつがいの鶴とその雛鳥が餌をついばんでいた。
その側では年老いた二羽の鶴が羽を休めている。
勘兵衛はハッと思い、その鶴に向かって叫んだ。
『千鶴子!』
つがいのうちの一羽が頭を上げ勘兵衛のほうを見た。
誠に美しい白羽はまさに千鶴子の白い肌そのもののようであった。
『千鶴子、、お前が千鶴子さんだったんかぇ、、?』
勘兵衛がらぼそりと呟く。
その鶴は勘兵衛の言葉に応えるように「ケーン、ケーン」と高く鳴き、はるか西のほうへと飛び去っていった。
終
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