『そ、そげなことはいかん、、ひ、人様の座敷で旦那の嫁御を寝取るなんちゅうことは、だ、断じてあってはならんぞ』
動揺する勘兵衛。
千鶴子は四隅の襖を順に閉め歩きながら、勘兵衛に言った。
「はて、人様の家の風呂場でそこの嫁御とまぐわったのは何処の何方ですかねぇ..」
千鶴子が横目でちらと勘兵衛の顔を見る。
『あ、あれは、その、、ことゆえじゃ、間違いじゃ、つい湯女遊びと勘違いした事の運びでな、、、』
勘兵衛の情けない屁理屈を聞き終える前に、千鶴子は最後の襖をぴしゃりと閉めた。
部屋の中は行燈の灯りひとつになり、白い襖には千鶴子の影が妖しく揺らめいている。
勘兵衛は再び喉を鳴らし唾を呑んだ。
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