勘兵衛が風呂からあがると、庄吉たち家族の姿はなかった。
奥の座敷で千鶴子が寝床の用意をしている。
『あれま、旦那さんたちはもうおやすみかい?』
「ええ、ついさっき寝間のほうへ下がりましたよ。あの人珍しく今日は酔ってたみたいですから..」
『そうかい、、風呂の礼ば言おうと思っちょったがのぉ』
千鶴子は勘兵衛の布団を敷き終えると、そのすぐ隣にもう一枚布団を敷き始めた。
『なんぞ、奥さんや、あっしの布団は一枚で十分だがね』
「ふふふ..お客さんたら可笑しいわぁ、こっちはうちの布団ですよぉ」
そう言いながら千鶴子は白い敷き布を手のひらで叩いて皺を綺麗に伸ばし、そこに枕を二つ並べて置いた。
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