数秒・・・いや、リビングの扉を開けてから1分ほどの静寂。
それを切り裂いたのは静かな、聴き慣れた声だった。
「・・・おかえりなさい・・・遅かったのね」
「あ・・・・・・あぁ・・・」
喉から声を絞り出した。
声を聞くのは何日ぶりだろう。
リビングに居るのを感じるのは何ヶ月ぶりだろう・・・。
心臓が怒りではなく、静かな、言い知れない緊張感に高鳴っていく。
「・・・電気をつけてくれない?」
「・・・」
俺は何も言えない。
動くことができない。
今すぐに見たい。
けれど二度と見たくない。
「・・・暗いの・・・お願い」
俺は誘惑に負け右手を扉の横に、リビングのライトのスイッチに手を伸ばす。
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