「あのさ」
「うん」
「あの女さ」
「うんうん」
「・・・・・・」
たったこれだけのやり取りで、山崎は少し面倒くさくなったようだ。
その表情の変化に少し笑いそうになったが、なんとか我慢した。
「・・・あーー・・・だから・・・」
「だから何だよ」
「・・・あーー・・・あの女さ、部屋で俺達に囲まれて、それだけでイッただろ?」
「・・・うん?」
「うん?じゃねぇよ。あの女、自分を脅して好き勝手されてきた俺達に、また呼び出されて、ホテルに入って、囲まれて、、、それだけでイッたの!」
あぁ~、そうだね、、、と、川口は、いまいち納得できない表情をした。
それを見てさすがに山崎は話題を変えた。
「けどさ、その刺青・・・どうやったの?」
川口は、話題が変わって助かったとでも言いたそうな表情で山崎と杉本を交互に見る。
「どうやったって?」
杉本の表情は今すぐにでも自慢したそうに見えるが、わざとはぐらかしている。
「だから!」
さすがに山崎は面白くなさそうだ。
「俺達3人・・・いや、優子と4人、24時間一緒だったろ?」
「ああ」
杉本の表情は余裕だ。
だからか、山崎はイライラし始めている。
「で、そんな話しなんて出なかった・・・で、なんで俺たちが分からない間に【所有者】になってんの?って聞いてんの!」
まぁ確かにもっともな質問。
もっともな疑問であり苛立ちだった。
山崎自身も妻を支配していた自負があるだろう。
何せ最後の一線を越える前に妻を「売った」のはこの男だけだったのだから・・・
山崎は山崎なりに妻の内面を理解していた。
そして、その理解は間違いではなかった。
それが妻から伝わるからこそ、余計に不思議で、余計に苛立つ。
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