「いやぁ・・・たまりませんね」
驚いて声の方を見ると、個室を区切る板壁の上から丸い顔がこちらを覗き込んでいた。
逆光で見にくいが、おそらく50歳くらいだろうと思える色黒の男の顔だ。
頭はハゲ上がり、太い眉と分厚い唇をニヤニヤと歪めながらこちらを覗いている。
「ちょっと・・・お借りできませんかねぇ?いやいや本当にちょっとだけ、少しの時間で良いんですよ」
男はこちら側が何も反応を返せずにいるのに話を進める。
それだけでもこの男が自己中で粗雑で強欲だとわかる。
最初に反応したのは山崎だった。
は・・・ははは・・・と乾いた笑い声の後「いいぜ、オッサン」と続けた。
「覗かれて気分は良くないが、この女見てチンポ勃ったんだろ?・・・いいぜ、貸してやるよ」
「おぉ!それはそれは・・・」
男は嬉しそうに笑い、では早く、さぁ早くと急かして妻を自分の個室に誘った。
山崎は動かない妻を立たせ、その尻を撫でながら自分を跨がせるように個室の出口から妻を追い出した。
「・・・おい」
川口が視線で山崎を責める。
その視線に少し気まずそうにしながらも、山崎は興奮しきった顔で「いいじゃないか」と答えた。
山崎はおそらく、こうゆう性癖なのだ。
これは自分の物だと周囲に見せつける事で満たされるのだろう。
征服欲、顕示欲、、、そういった感情を満たして興奮するのだろう。
だから晒す。
だから見知らぬ男に貸し出す。
「お前も不満そうだな」
川口は無言で料理をつまんでいる杉本に話しかける。
「コイツは、今日は自分が手を出せないって事に不満なだけだろ」
山崎が川口に反論する。
「くじ引きで決めたんだからしょうがないだろ?」
「そうそう、それにくじ引きで勝ったのはお前だぞ?」
「来週の出張中は俺たち2人は仕事、その間はお前が肉便器をやりまくる。・・・お前もくじ引きの時は喜んでたじゃないか」
3人だけの会話が進む中、俺の耳は隣の個室に集中していた。
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