約2時間の『素麺流し』が終わりました。参加した御老人の方は先に帰り、残った僕達で会場のあと片付けを始めています。
婦人会の数人の方は掃除機を手にし、余った僕達は集めたゴミを外へと運び出します。そこにおばさんの姿もありました。
『盛り上がって良かったですねぇ?』と声を掛けると、『ナオヤくんに助けてもらったねぇ?』とお礼を言われます。
やはり、おばさんも居場所がなくて困っていたのです。そこへ、母が現れました。『なになに?密談?』、面白がってそう言って来ます。
そして、『乃村さん?こんなので良かったら、いつでも持って返ってよ。』と言ってしまいます。これには少し焦りました。母も同じだったかも知れません。
同級生の彼、おばさんの息子さんは今いないのですから。しかし、『オホホ…、ありがとう。』と笑顔を見せてくれました。その笑顔に救われるのでした。
その日、名前も知らないお手伝いさんの姿がありません。お店に入ると、すぐにおばさんが現れました。
僕は和菓子の中でも、軽く食べられるものを取ります。今日はお客さんで来たのです。おばさんは袋に入れようとしました。
しかし、『ああ、すぐに食べるからいいですよ。』と言い、そのまま受け取ります。財布を開くと、『お金いいのよ。』と言われました。
気を使ったつもりが、逆に気を使わせてしまったことに後悔をします。『いいです、いいです、』、僕は押しました。
しかし、一旦『お金はいいです。』と言ったおばさんが、受け取ることはありませんでした。
お菓子をかじりながら、『僕、乃村くんに謝らないといけないことがあるんよ。』とおばさんに言います。本当は、これを彼女にも聞いて欲しかったのです。
それは、ここ2年の僕の行動。彼に対する、僕の付き合い方でした。あれだけ遊んでいたのに、就職を機に付き合い方が変わりました。
顔を会わせても話をすることもなく、挨拶程度でとどまっていたのです。『話くらいしないと。』、そんなは気持ちはありました。
しかし、近所に住んでいるという余裕が、『また今度でいいか。』と先伸ばしをさせてしまったのです。そして、彼が倒れました。
そうなるともう、後悔しかありません。『なんで、あの時に。』と、そんなことばかりを考えてしまうのです。
『ありがとうねぇ。なら、あの子もきっと同じこと考えていると思うわ。』と、おばさんは僕を責めませんでした。やさしいおばさんでした。
そして、『乃村くんに会える?』と聞くと、『会いに行ってくれる?あの子も喜ぶと思うから。』と答えてくれました。
彼がああなってから1年、実際会うのはもう半年くらいさかのぼることになります。ようやく、幼馴染みの友人に会うことになったのでした。
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