翌日の夜7時。
帰宅をした僕は、駐車場の車の中でスマホの操作をしています。画面に写し出されたのは、『和菓子 乃むら』の情報。
その『電話』のアイコンに、指が掛けれずにいました。乃村くんの家に電話をすることなど、もう小学生以来のこと。
おばさんと電話をで話しをするのもそれ以来なので、いろいろと考えてしまい、なかなかボタンが押せません。
『昨日、セックスしたから。』という事実も、長年の付き合いからくる遠慮を跳ね返すまではいきません。
当たり前かも知れません。
僕は、昔からよく知る近所のおばさんに、『今日もおばさんとセックスしてみたいから、シャッターを開けて欲しい。』と電話をしようとしているのです。
指がアイコンを押しました。電話がコールをされ、この時間が一番緊張をします。『出るな、出るな、』と考えてもしまいます。
『乃村です~。』と落ち着いた加寿代さんの声。『ナオヤですけどぉ~。』と言うと、おばさんの方に一瞬の間が出来ます。
しかし、『ああ~、ナオヤくん?』と普段通りのトーンで返事をしてくれるのです。おかげで、心に余裕が出来ます。
一度話しが始まれば、あとは成り行きで進められますから。
5分後、ギィィ~という錆びた音と共に、お店のシャッターが上がり始めます。くぐれるだけ上がると、僕は入り込み、またそのシャッターは降ろされました。
先導をするおばさんに連れられ、暗いお店を抜け、中庭を通り、またこの家へと来てしまったのでした。
リビングに通され、出迎えてくれたおばさんは、いつものおばさんでした。物静かで、しとやかな加寿代さんです。
テレビがつけられ、ソファーに座ってくつろぐ僕達。しかし、何かを言ってくるであろう僕を、彼女は少し警戒をしているようにも感じます。
『今日、ここに泊まってもいい?おばさんと一緒に、ベッドで朝までいてもいい?』
それは、今日のお昼に考え続けた言葉。夜這いという、中途半端な行動をしたため、言い訳の出来ない僕は昨夜は帰ることしか出来ませんでした。
そうではなく、自分のしたい事、思っている事をちゃんとおばさんに伝えたほうがいいと考えての事でした。
言い換えれば、『おばさんを抱きたい。抱いて、朝まで一緒に過ごしたい。』と言っているようなもの。僕には『究極』とも言えました。
それを聞いた彼女は、『なら、準備しないと。』と言って、その場を離れました。しかし、それは寝室のある2階ではなく、一階の奥の部屋。
おばさんは暗い廊下を進み、ある部屋へと入って行ったのです。
僕はリビングで待たされていました。1階の奥の部屋には明かりがともり、スリッパで廊下を歩く音もして、どこか慌ただしくもなっています。
ガラスの扉が開かれていました。蛇口が捻られると、ガスの湯沸し器が音をたて始めます。僕のためにお風呂が入れられているのです。
そして、加寿代さんが現れたのは、もう15分くらいが経っていました。その手には浴衣があり、僕のための物のようです。
風呂場の扉が開けっぱなしなのか、廊下には湯気が立ち込め始めています。
『ナオヤくん?お風呂入れたから、入って。』、そう言われ、おばさんの手からは着替えのための浴衣が渡されました。
僕はそれを片手で抱え、もう1つの手は加寿代さんの手を握り締めました。『ほら、一緒に入るよ?』と言って彼女を引いて行きます。
『私はお風呂入ったから…。』と言われますが、その手を離すことはありません。
『オホホ…、ナオヤさんったら~…。』と笑い、わがままな僕に呆れているようです。しかし、ちゃんと自分の『女』を感じてもいます。
男に風呂場へと誘われ、呆れ笑いながらも、その足はちゃんと前へと向かっているのです。
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