加寿代さんのお腹を抱き締め、程よい疲れを感じながら、その余韻に浸っていた僕。そんな彼女の身体が、スルリと僕の腕から逃げてしまう。
彼女は浴衣を羽織り、この寝室から出ていってしまったのだ。『お風呂?すぐに戻ってくるかぁ。』と思っていましたが、なかなか帰っては来ませんでした。
20分くらいが経った頃。少し心配にもなった僕は部屋を出て、明かりのついている一階へと降りて行きます。
降りた先のリビングには照明がついていて、小さくテレビの音も聞こえて来ます。きっと、おばさんはそこにいるのです。
リビングを覗き込みます。ソファーに座り、テレビを見ていたおばさんが僕の方を見て、僅かに微笑みました。
それに安心をして、僕もリビングへと入り、ソファーへと腰掛けます。しかし、そこには微妙な空気が流れてしまうのです。
初めてのセックスを終えた二人。しかし、それは愛し合うものではなく、お互いに快楽を求めたものでした。
それにおばさんにしてみれば、寝ていたところに夜這いをされたようなもの。あまりにも突然の出来事となってしまった。
残ったのは、『してしまった。』という事実。彼女自身、こんなセックスは初めての経験だったので、頭の整理もつかず、半分ここへ逃げて来たのです。
加寿代さんの目はテレビに向けられていました。普段であれば、夜11時には寝ている彼女。こんな深夜のテレビに興味などないはずです。
しかし、一点を見つめながら考えてもいないと、きっと何かを言ってくるであろう僕に、冷静な対処が出来ないことが彼女は分かっていたのです。
『ナオヤくん、そろそろ帰る?おうちの方、心配してるでしょうから。』、おばさんにそう言われ、僕は返事に困りました。
『泊まっていったらダメ?』と聞くと、『お泊まりさせてあげる準備が出来てないから…。』と答えられました。
彼女の言う『お泊まり。』とは、僕をお客さんとして出迎える、お泊まり。『一緒に布団で…。』というものとは違うようです。
それに、無言のおばさんの顔がこう言っています。『帰って。耐えられないから、今日はもう帰って。』と、二人の間の空気に懸念をしているのです。
それは、乃村くんの母親の顔でした。近所のおばさんとして、僕に言ってるようにも感じます。
そんなおばさんの顔を見せられてしまい、僕は帰るしかなかったのです。しかしその行動は、ある失敗を招いてしまうのでした。
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