おばさんは、とても淑やかな方です。うちの母のように自分から喋るタイプではなく、話を聞く側。
輪の中心ではなく、端にひっそりといるタイプ。それは、病院でいる友人も同じような感じだった。母親をそのままコピーしてしまったようだ。
11時30分が過ぎた。僕の時間を気にしたおばさんが、『ヤスちゃん、一回帰るねぇ?』と息子に告げる。
駐車場へと出たおばさんは、『ナオヤくん、おばさんのところ何もないから、お昼どこかで食べる?それともお買い物して、おばさんの家で食べる?』と聞く。
僕が選んだのは、後者だった。あの誰もいない空間で、おばさんと二人だけで居られるというのが、なんともエロくて堪らないのだ。
スーパーに入り、カートを押しながら、おばさんと買い物をする。僕が押すカートに、品物を選ぶおばさんが入れていく感じです。
その素材から、お昼ごはんはオムライスと想像できた。更に洗剤やトイレットペーパー、乾電池までもが入れられ、完全に買い物モードのおばさんでした。
車を持っていないだけに、車に乗ってきた僕に甘えようとしたのだと思います。
昼食は、やはりオムライスでした。母とは違うおばさんの味。ここで、あることを思い出します。それは、中学生の頃の話。
中学は給食ではなく、各自お弁当持参でした。母親の作ってくれたお弁当をみんなで食べるのです。
そんな僕は、乃村くんと『弁当、交換しない?』と言ってみたことがありました。他人の家のお弁当って、やはり気になったのです。
彼もうちのお袋の味には興味があったらしく、二人のお弁当は交換をされます。彼の母、つまりは加寿代さんの料理の味は最高でした。
ほんとに美味しくて、それ以降も何度も交換してもらったものです。その彼女が作ってくれるオムライスを食べ、そんなことを思い出していました。
そして午後2時、僕はおばさんの家を後にするのです。
僕が帰り、また誰もいなくなったこの家。人に気を使うのは好きではない加寿代さんですが、やはり一人はどこか寂しくも感じます。
スーパーで買ったものの整理しながら、そのビニール袋に最後に残ったのは単3の乾電池でした。
それはテレビのリモコンとかに入れられるものではありません。昨日の夜、突然動かなくなってしまった、あのピンクローターに使われるものだったのです。
彼女は息子の部屋へと入ると、またあのピンクのローターを手にしていました。馴れない手で電池の交換をし、そしてレバーを上げます。
『えっ?どうして?』、加寿代さんは焦りました。電池切れだと思っていただけに、動かないおもちゃに動揺します。
それほど、このおもちゃは今の彼女には無くてはならない存在となってしまっていたのでした。
結局、レバーを何度も入り切りしてもそれが動くことはありませんでした。壊れてしまったのです。
翌日の月曜日の朝。朝8時前には開くはずの『和菓子 乃むら』のシャッター。しかし、その日はなかなか開かず、1時間遅れの開店となります。
中からは名も知らないお手伝いさんが顔を出し、早速訪れたお客さんの応対を始めていました。加寿代さんはと言えば、まだ布団の中で目を閉じています。
10分ほど前にお手伝いさんから、『奥さんはまだ寝ていてください。私がお店に出ますから。』と優しい言葉を掛けてくれたからです。
それでも加寿代さんは、『私もお店に出ないと。』と身体を起こしました。掛けていた布団が落ちると、彼女の着ていた浴衣がありません。
それどころか、ブラジャーもパンティーも身に付けてはなく、全裸で布団に転がっていたのです。彼女の手は股間へと滑り込みました。
さっきまで激しく濡れていたはずのそこは、ちゃんと拭き取られています。
遅れてお店に顔を出した彼女は、『ごめんなさいねぇ。』とお手伝いのおばさんに謝ります。そこにはお客の姿はなく、お手伝いさん一人でした。
『大丈夫ですよ。』と声を掛けてくれたお手伝いさん。名前は『佑子さん』と言うそうです。年齢は48歳。隣町に住む方のようです。
手を洗い始めた佑子さんの手。その手を見た加寿代さんの脳裏には、数分前の出来事がプレーバックをされていました。
『奥さん、好き…。私、奥さんのことが好きです…。もっと感じてください。』
そう言って自分を責めてくれていた、彼女の手。数年ぶりに人の手でアソコを責められ、激しく濡れながら逝かされてしまった自分。
相手が同性だったのに後悔はなく、まだ心のどこかでその手を待ち望んでしまっている自分がいました。
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