「ジャズイ」で家を空ける女性の為、その夫である男性は女性の代わりに家事等をこなし、またそれに対して不満も言わず協力していた。
夫にも「世話人」がいて自分が「ジャズイ」に行く時もお互い気持ちよく送り出せる様にと。
小さい頃からの教えにより、集落の男子の家事能力は他の地域の男子に比べてはるかに高く、他所の地域の女性からモテる要因でもあった。
「世話人」は生涯変わらないが、今で言うスワップみたいな事も認められていた。男子がお互い話合い、「世話人」の了解もあればその日のみの交換もできた。ただ乱行だけは禁じられていた。
私の時は「世話人」が必ずコンドームを持って「ジャズイ」に来ていたが、無い時代は誰の子供かわからなくなる為だったらしいが、10人近い男子の「世話人」になっている時点で矛盾があるだろとは思ったが、そこは皆突っ込む事はしなかった。
コンドームは各家からの互助会費でまとめて買い「世話人」に配っていたり、集会所に置かれ記名すれば自由に持ち出す事もできた。
私の母も何人かの「世話人」になり、家の玄関にはコンドームの箱が置かれている事がよくあったのを覚えている。
ここからは私が経験した儀式の話。
部屋で友達と「世話人」の到着を待っていると、年寄衆は数字が書かれた札を私達の首に掛けた。
『もうすぐ世話人がくるからな。札の数字を見て世話人がお前達の側に行く。さ、それぞれの布団で座って待っとれ。』
4番の札を首に掛け部屋の右奥に敷かれた布団に座ってすぐ、「世話人」の女性4人が談笑しながら部屋の前に並んだ。
薄いピンクの襦袢姿で籠を抱えていて、もちろん全員昔から知っている人だったが、濃い化粧のせいか誰がいるのか認識するのに少し時間がかかった。
年寄衆の合図で女性達は動き出し、それぞれの相手の前に座った。
『やっちゃんだったか~!よろしくね!』
「えっと…お願いします!」
『はいはい!これから頑張ってイイ男になってってね~!』
「はい!」
私の「世話人」は家から三軒先に住む由美子さんだった。その時たしか38歳で、私より少し上の息子がいてよく遊んでもらっていた。
他の男子と女性も皆顔見知りなので、和やかに挨拶していた。
挨拶を交わしている最中、年寄衆は低めの衝立を4つ部屋の中に持ち入れ、ちょうど部屋に菱形ができる様に斜めに設置し、中心にはランタンを置いて部屋の戸を閉めた。
集会所は電気が通っていなく、夜はこのランタンか蝋燭の灯りだけになるのでかなり薄暗い。部屋の四隅にそれぞれ蝋燭が灯されていたが、ランタンもあると相手の顔もよく見える様になった。
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