私が「ヒザツキ」の条件に当てはまる年齢の、少し前の夏。
長く続いた梅雨に追い討ちをかける超大型の台風が集落を襲った。夜中から明け方にかけて直撃する予報が出ていて、集落の人達は早めに川を挟んだ反対側にある避難所に逃げていたが、避難している人は集落の半分程度の人だけだった。
それまでその集落に災害らしい災害というものはなく、また今と違って大雨に対する危機意識も薄かった。
結果。
クホウ様を奉ってある集会所のすぐ裏手から土砂崩れが起き、物凄い土石流も同時に流れ込み、集落の1/3を押し流す災害が起きてしまった。
避難所にいる人達も建物の外で対岸の集落の惨状を目の当たりにし、泣き叫ぶ人や呆然とする人様々で、中には自分の「世話人」が避難していない事を知り、豪雨の中集落へ向かう人も多くいた。
結局……集落では十数人の犠牲者を数え、集会所や平家武者の墓とされる石碑、三十軒以上の家を押し流される被害があった。
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