止めた方がいい。
そう思いながら彩子は席を立てなかった。(源さんの話が本当なら全額返済なんて出来ない)迷ううちに源さんが戻ってきた。
「待っててくれてたね。嬉しいよ」
「源さん、あの私、またあんなことは、」彩子の言葉を遮るように源さんが言った。
「もう一度天女になって欲しいんじゃ」
(後一押し)源さんは銀行の封筒を取り出しテーブルに置いた。
「あっ」
彩子は驚いた。分厚い封筒、いくら入っているのだろう。はしたないと恥じながら今の彩子は封筒から目をそらせなかった。
「躊躇うのは判るよ。老人の介護だと思ってもらえればいいよ。後に付いて来てください」
源さんは言うと席を立った。
黙ったまま彩子は源さんの後ろを歩いた。時折源さんは振り返り彩子の姿を確認しながら駅に着き、二駅離れた繁華街の駅に下りた。
「このまま付いて来てください」
源さんは言うと歩き出した。線路沿いに賑やかな通りから少し外れた。
「あっ源さん、ここ」
彩子は思わず立ち止まった。ラブホテルの通りだった。
「外では出来んだろ、ああいうことは」
「、、でも私」
「大丈夫だよ。落ち着いて中で考えればいいからの」源さんにソッと肘を押され、彩子は昼間のラブホテルの入口をくぐった。
(覚悟を決めたな)源さんは内心ニヤリと笑った。
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