憂鬱そうに俯く彩子。
(堪らんのお中川さん)源さんは思いながら、
「まだ社長からは何も請求されとらんのかい」
「はい、まだ何も」
どうしよう、不安に感じながら彩子は答えた。
「中川さん、相談なのじゃが」
珈琲を一口すする源さんを彩子は見つめた。
(ああ本当に上品な顔をしとるな)源さんは柔らかい声で、「中川さんの身体、綺麗じゃった」
彩子は緊張した表情になった。
「おいらのような下町育ちには中川さんは雲の上の天女なんだ」
「そんな、天女だなんて」
「いいや、工場の皆にとって天女なんだよ。だからこの間はあんなに激しく責めてしもうたんじゃ」
彩子は恥ずかしげに苦笑した。
「ありがとうよ」源さんは笑って言った。
「そんな。私、皆さんにお金を融通して頂いたのに」
コーヒーカッブに唇を付ける彩子の仕草に、源さんはまた上品さとぽってりした唇に色っぽさを感じた。
「また、用立てても良いよ」
源さんは言った。
彩子はその言葉の向こうに、セックスがあることを悟った。
「実はあの時、南山や北堀が居たから言わんかったが、いい歳をして久しぶりにアソコが反応したんだよ」源さんは恥ずかしそうにしながら、
「嫁が亡くなって5年。その前から勃起せんようになっておったから10年ぶりだったわ」
彩子は戸惑いながら、
「源さんの年齢なら気になさらなくても」
「そうなんじゃが、男としては嬉しくてな」
源さんは彩子を見つめた。
「今からスーパーにあるATMに行ってくる。答てもらえんなら、さきに帰って下さい」源さんは言うとスタバのテラスから立ち上がった。
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