敬子は床に投げたブラシを全裸のまま睨んだ。
キツい視線の目にはうっすらと涙が滲んでいた。
そうして自責する。
耕三に植え付けられた思考のまま。
私は何て事を・・・こんなモノを体に・・・
・・・穢らわしい・・・汚い・・・
こんなの普通じゃない・・・こんな・・・
こんなの・・・変態・・・どうしようもない変態だわ・・・
私は・・・どうしようもない変態・・・
敬子の性癖は育ち、深く大きくなっていた。
自分で気づいた時よりも被虐性が強く、強く強要されると何にでも従うマゾ性になっていた。
自分を辱しめる屈辱的な行為だけでなく、自分が最低だと明らかになる事にも興奮するようになっていた。
心に浮かぶ後悔の言葉や自責の言葉さえ、体が反応してしまうほど心が育ってしまっていた。
敬子の頭の中では敬子を責める声が鳴り、その語気が強まるほど敬子自身が欲情していく。
(変態だわ)
【ごめんなさい】
(便所ブラシでオナニーするなんて・・・便所ブラシでイケるなんて変態よ・・・)
【ごめんなさい】
(こんなの、普通の人がするわけない・・・最低の変態マゾ・・・)
【ごめんなさい】
(旦那には言えない秘密をまた増やして、、、どうしようもない変態人妻だわ、、、)
【ごめんなさい】
(便所ブラシでオナニーするなんて・・・敬子の体はまるで便器ね・・・)
【・・・】
(敬子の体は便器ね・・・)
【・・・】
(敬子は便器・・・敬子の体は便器と同じよ・・・)
【・・・】
(敬子は便器・・・敬子の体は便器・・・敬子は便器と同じ・・・)
【・・・私は便器】
冷たく悲しい屈辱の塊と卑猥で熱い欲情が、子宮から背筋に上り、ゆっくりと首筋を伝い後頭部に到達する頃、敬子は立ったままで、言葉を口にするだけで、軽い絶頂を迎えた。
「・・・私は・・・私は、便器・・・私は便器と同じ・・・ん・・・・んん・・・」
パソコンを振り返り、敬子はゆっくりと歩きはじめた。
椅子を引き、パソコンの前に座り、マウスを軽く左右に振る。
画面が切り替わるのを待ち、リロードのボタンをクリックする。
キーボードに手を伸ばす前に目に入った文字を見て、敬子はまた軽く絶頂を迎えた。
【便器】
自分の心を見られていると感じた。
今、この瞬間、敬子にとって最も屈辱的で卑猥で魅力的な言葉を無言で言い当てられた気分だった。
敬子は、自分はもうこの男のモノだと感じた。
誰にも見られるはずのない心の底まで全てを知られ、全てを理解されていると感じた。
だからリロードのマークを見ながら願っていた。
表示された文字が、敬子の願い通りの「呼び出し」だった事に、恐怖よりも嬉しさを感じていた。
敬子は何の不安も感じず、コートを羽織っただけの姿で家をでた。
そうしろと言われたのだから、1枚の布さえ身に着けなかった。
これは毎日の命令と一緒・・・しなくてはいけない・・・そして今日は、初めて自分からそうしたいと感じた。
指定された道を歩き、目印となる看板を過ぎ、言われた通りの角を曲がる敬子の目には、『月極め専用』と書かれた駐車場の看板が見えていた。
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