実際には、婦人科の扉を開いてからまだ2時間も経っていないだろう。
けれど私は、毎回それが信じられなかった。
もう何日も経った気がする。
何度も死んだ気がする。
「おい・・・おいっ・・・ほら、見えるか?・・・おいっ・・・」
先生が頬を叩いている。
私が視線を向けると笑顔になる。
「ほら・・・」
顎を掴む手に顔を横に向けさせられる。
視線の先にはモニター。
そこには3本目の棒が並べられていた。
(こんな・・・こんなの・・・)
私は絶望した。
枯れたと思った涙がポロポロと溢れた。
その棒は、2本目の倍以上の太さだった。
丸い膨らみがいくつも、ボコボコと並んでいるのがハッキリと見える。
「こんなの入れたら・・・どうなるだろうねぇ?」
先生の顔が笑っているのは見なくてもわかった。
それくらい嬉しそうな、怖くて冷たい声だった。
「いや・・・ダメ・・・ダメ・・・」
見上げると、先生は不思議そうな顔を私に向けた。
「ダメ・・・こんなのムリ・・・いや・・・」
先生は私のアゴを掴み、私の視線をモニターに戻す。
「作るのに苦労したんだよ、これ」
試験管の中で棒がフラフラと揺れる。
カメラレンズに近づけられ、アップになる。
「このクビレ・・・わかるかい?・・・」
(あ・・・あ・・・)
「これでね・・・こんな風に・・・」
(あぁ・・・そんな風に動かしたら私・・・)
「ほら・・・こうやって・・・」
(見てるだけでこんな・・・こんなのが入ったらわたし・・・)
「ほら・・・欲しいだろう?・・・子宮の内側をこれで・・・」
私はモニターを見つめながら頷いた。
先生は何も言わずに、モニターの中で白い棒が試験管の穴に向かって進んでいった。
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