私はマリの浮気を容認しながらも、マリが3か月で仕事を辞めて元の平凡な専業主婦に戻る
ものだと単純に信じていた。ところが思わぬ事態が発生して、この望みが打ち砕かれた。
それは会社の専務が正規社員同様の待遇にするから、勤務を続けてほしいと言ってきたのだ。
マリを秘書課におきたいというのだ。マリはその話にすっかり乗り気だった。勤務は楽だし
報酬もいいし、何よりアパレルメーカーとしては美貌が売りの役職だったから、マリの
自尊心をも満足させる仕事だったのだ。ハヤトと部署が違い階も別だとは言え、
やはり同じ会社となるといつ顔を合わせて、また深い関係にもどるかもしれないと
私は気が気でなかった。そんな私の心理を見透かしてあざ笑うかのように、「もうハヤトとは
二人きりになることはないから、心配しないでね。」と言うのであった。
秘書課に変わって1か月が経ったころだった。
突然仕事中に私のスマホに妻からメールがきた。それは
「今夜村上専務と食事会があります。秘書課の綾香ちゃんと一緒です。カラオケにも行くかも。」
という内容だった。私は
「了解。でも飲み過ぎなようにね。」
と短くメールしておいた。村上専務という人はマリとの会話で時々話題に出ていた50代の上司だった。
同僚も一緒なら今回は相手が専務だし大丈夫かとも思ったが、また何か変な事が起こるのでは
という不安も心をよぎった。そしてその不安は的中することになった。
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