コの字のボックス席の通路側の丸椅子に座って相手をしてくれていた真由美さんでしたが、
ビールのお替りを飲み始めたところで、友子の左隣に座りました。
私、友子、真由美さんの並びで、普通なら、真ん中に入るか私の横に着くと思うのですが、
友子と意気投合しているせいか何のためらいもなく友子の横に座りました。
真由美さんは、私に歌を歌うように勧めてきましたが、まだそれ程酔っている訳でもなく、恥ずかしがり屋の私は遠慮していました。
友子 :「あなた、遠慮しないで歌ったら、昔の歌を。真由美さん、うちの人ったら、古い歌ばかり歌うのよ!
今の歌なんて知らないもんね?」
私 :「ああ、そうだよ。どうせ俺は古い歌ばかりですよ!青春時代の歌が一番なの!」
真由美:「友子ってひどいのね。そんな風に言ったら裕ちゃん歌えなくなっちゃうじゃないの。気を悪くしないで、何か歌ってよ!」
私 :「え~~いっ、やけくそだ!ん~~~ん、じゃあ、世良正則&ツイストの『燃えろいい女』を入れて下さい!」
真由美:「は~い、しぶいねぇ」
私にしてみればシブイって言う感じではないのだけれど、どうせ斎藤さんしか聞かれて恥ずかしくないので
(ママと真由美さんはお世辞で「上手い」というに決まっているから)、もうやけくそで入れてもらいました。
ステージにいって、前奏はしらーっと立っていましたが、曲がはじまると、足をがに股にひらいて、
世良さん張りで「またひーとつー、きらめく風~が~・・・」と気持ちよく歌い始めました。
ママと真由美さんが手拍子をしてくれてだんだんこちらも乗ってきて、歌詞の
「燃えろいい女、燃えろ夏子」のところを「燃えろいい女、燃えろ友子、眩しすぎるお前との出会い~~~」と気持ちよく歌いました。
歌い終わると案の定ママと真由美さんが大きな拍手をしてくれて、「お上手ね~」とか、「裕ちゃんやるー」とか言ってきましたが、
照れながら席に戻ろうとするとママが手招きをするので、カウンターの方に行きました。
斎藤さんの右隣りの一つ椅子を空けたところに座りました。
ママ :「かっこよかったわよー、うまいのね。」
私 :「いやーお恥ずかしい。年甲斐もなく・・・まあ誰も聞いてないし思い切ってやってみましたよ、はっはっはっは」
斎藤 :「聞いてましたけど、お上手でしたよ。」
私 :「あっ、どうも・・・」
ママ :「あっ、ご紹介しますね。こちら常連の斎藤さんって言って、なんか今流行のIT会社の社長さんです。」
斎藤 :「斎藤です。流行かどうかわかんないっすけど、小さなIT会社やってます。今日はおめでとうございます。」
私 :「ありがとうございます。私は○○と申します。お騒がせしてすみません。」
斎藤 :「いえいえ、楽しく拝見させていただきました。」
ママ :「裕ちゃん、よかったらここでご一緒に少し飲まない?」
私 :「あっ、構わないですよ。じゃあ、飲み物もってこなくちゃあ・・・」
ママ :「あっ、大丈夫よ。『真由美ちゃ~ん、裕ちゃんのグラスこちらにお願いね~』」
真由美:「は~~い、ただいまお持ちします~。」
そう言うと、真由美さんが飲みかけのグラスを持って来てくれました。
ママ :「あらためて乾杯しましょうか?では、裕ちゃんと友子さんの結婚30周年を記念して、かんぱ~~~い!」
斎藤 :「かんぱ~~い!おめでとうございます。」
私 :「ありがとうございます。」
ママ :「裕ちゃん、よかったらもう一つ詰めて、こちらのお隣に来ては?話が近くなるように・・・」
私 :「は、はい。よろしいですか?」
斎藤 :「あっ、どうぞどうぞ!」
そう言われたので、一つ空けておいた椅子の方に座り直しました。
彼は山崎のボトルを入れており、私のグラスが空いたのを見てママより先にこう言いました。
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