6月に入って、事務長さんも少しだけ仕事に余裕が出来てきたみたいですが、それでも忙しく、会えるのは月に4~5回程度。
セックスとなると、たった2~3回となります。仕事を優先してきた彼女なら、セックスレスは我慢出来るかも知れませんが、若い僕にはとてもツラいです。
そんな時でした。上司が僕に、ある見合い話を持ち掛けて来たのです。その相手は、去年仕事をさせてもらったお客さまの『吉川さん』でした。
そこの奥さんが、愛想のいい僕を気に入ってくれたらしく、『うちの娘とどうかなぁ?』ということでした。
何回か、その娘さんに会ったことはあります。顔はあまり思い出せませんが、母親の影に隠れているような、内気で物静かな方だったことは覚えています。
『見合いとか、そんな堅苦しいものじゃないんや。二人で会ってめしでも食って、話しでもして、ダメやったら、断ればええし。』と上司だった。
『ダメたったら、断ればいい。』、その言葉がとても気楽に思えてしまい、決め手になった。『なら。』と返事をしてしまいます。
10日くらいして、その席は儲けられました。あるホテルのレストランで待ち合わせをしました。先に着いていた僕は、彼女を待ちました。
時間ピッタリに、ある女性が『この人かなぁ?』と僕の顔を覗き込むようにして、近づいて来ました。
『吉川さんですか?』と聞くと、その女性は安心したような顔をしました。
レストランに座り、ようやく彼女の顔をまともに見ることが出来ました。洋服もお化粧も頑張ったみたいでそこでプラスされ、思っていたより可愛く感じます。
名前は吉川ナツキさん、28歳。僕よりも3つ年上になります。
食事が始まると、先に頑張ったのはナツキさんでした。前もってシミュレーションしてきたのか、次々と話をしてくれました。
ところがネタ切れになったのか、続かなくなり、飲み物をのむ回数が増えます。その時点で、『男性慣れしてないなぁ。』というのは分かっていました。
そこから、僕がサポートを始めます。自分の話をし、彼女の話しやすいように質問もしてあげます。うまくリズムが出来ました。
ようやく、彼女からぎこちなさが消え、本当の彼女が見えて来ました。とても内気で、恥ずかしがりや。多分、男性の前では緊張をしてしまうタイプ。
でも、少し時間を掛けて慣らしてあげると、その空間ではちゃんとおしゃべりは出来る方。人見知りなんです。
食事を終えると、初めて会った1時間前とは全然違う彼女の顔がありました。
とてもリラックスして、少し積極的にもなり、自然と僕に気に入られようとする女性の性が見えました。
『ドライブ、行きますか?』と誘いました。すぐに彼女の顔色が曇りました。きっと、食事だけのつもりだったのでしょう。
『なら、少し…。』と返事をしてくれ、彼女を連れ出します。何の計画もなかったですが、高速を飛ばして、行き先を考えます。
左に顔を傾けて窓を眺め、これではいけないと元に戻す彼女。緊張をしているのが分かり、それがどこか可愛く思えてしまいます。
観光地に着きました。車を降りると、すぐに手を繋いであげます。彼女の手が一瞬臆病になりました。
けどそれも、数秒の話。嬉しさなのか、気にしないような素振りに変わりました。その日は、ここでデート終了です。
『楽しかったですか?』と聞くと、『とても楽しかったです。(人生で)一番楽しかったかも。』と行ってくれて、こっちも安心します。
帰るとすぐにメールが来ました。『ほんと楽しかったです。また誘ってください。』と書いてありました。ある意味、仕事みたいなデートでした。
責任を果たしたようで、少し疲れました。ベッドに転がり、ナツキさんの顔が浮かびます。とても純情な方で、『処女かも知れない。』と期待もします。
残念ですが、その日は彼女のはずの事務長さんの顔は出て来ませんでした。もう、潮時なのかも知れません。
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