4月になり、事務長さんは別の中学の事務長として就任しました。この頃、彼女は新しい学校に移ったため、とても忙しく、ほぼ会えない日が続きました。
僕達の最大の危機だったと思います。メールしても返信がない日も続きます。『きっと大変なんだろう。』と思い、僕もそれ以上の無理強いはしませんでした。
すれ違いが1ヶ月近く続いた5月。僕の携帯に、知らない番号から電話が掛かってきました。『~~中学の大石です。』と事務長さんでした。
中学の名前こそ変わりましたが、あのトーンの喋り方はまるで変わっていません。しかし、中学の固定電話からなので、僕も仕事のトーンで話します。
『時間ある?ちょっと見に来て欲しいんだけど…。』と言われ、『午後からなら行けます。』と答えました。
新しい学校に着きました。事務室がどこにあるのかも分からず、その辺りにいた生徒さんに聞いて、そちらに向かいました。
事務室に着くと、奥で机に座り、電話をしている事務長さんの姿を見つけました。相変わらずの長電話で、15分近く待たされました。
電話を終えると、『ごめんねぇ~。』と言って僕に近づいて来ます。他の事務員さん達は、僕を『こいつ、誰だろう?』みたいな顔で見ていました。
事務長さんは鍵を手にして、『ちょっと見てもらいたいのぉ~。』と言いながら、僕を外に連れ出しました。
道中、『助かったわぁ~。ここ、親しい業者さんが一人もいないのよぉ。どこにも連絡するところがなくて~。信じられんわぁ~。』と言っていました。
で、事務長さんの判断で僕に電話が掛かって来たのでした。
連れて行かれたのは、敷地の外れにある電気室でした。『ここの床の工事を見積りをして欲しい。』という内容でした。
スケールで寸法を計り、写真を撮ったりしました。その姿を隣で事務長さんが見ています。しかし、その目は僕の彼女としてではなく、事務長としての目です。
一通り終えると、『(見積り)出来そう?』と聞かれました。『うん。出来ます。いついるん?』と聞くと、『早い方がいい。』と答えます。
『はっきり言って。いついるん?』と親身になってあげると、『ほんとは、今すぐにでも欲しいのよ。』と本音が聞けました。
『なら、明日の朝に持っていく。それでいい?』と言うと、『助かるわぁ~!!』と本当に嬉しそうな顔が見られました。
用事も終わり、安心した僕達。少し和みます。この電気室は敷地の外れだけあって、とても静かな場所でした。
『なんか久しぶりに会えたねぇ。ごめんねぇ。』と事務長さんが謝罪をします。『今は忙しいでしょ。また、会えるでしょ。』と答えてあげます。
事務長さんが扉に向かって歩き出しました。僕も去ることにします。ところが、事務長さんは中から『カチャ!』とカギを掛けてしまいます。
『ちょっとだけ…。』と僕に言いました。それに答えるように、彼女を抱き締めました。お化粧をしているため、キスも出来ず、ただ抱き締めるだけでした。
それでも幸せでした。久しぶりに、彼女を抱くことが出来ましたから。
彼女は尖ったアゴを僕の肩に乗せたまま、僕を感じていました。僕は彼女のことを考え、キスは彼女の髪に何度も何度も繰り返していました。
※元投稿はこちら >>