「お待ち合わせですか?」
女の声に澄男は顔を上げた。あっ。清楚な人妻、なんて美人なんだ。驚き返事を忘れた澄男に真由美がもう一度声を掛けた。
「もしかしたら、澄男さんですか?」
「あ、はい。すみません澄男です。」
自分でも呆けた態度だなと焦りながら、澄男は持参した薔薇を真由美に渡した。はにかみながらも笑みを浮かべ、真由美は向かい側の席に座った。
ショートカットの黒髪は人妻らしい清楚な印象、化粧の薄さがよけいに真由美を清楚に印象付けている。小さいがポッテリと厚く捲れた唇は唯一人妻の色気を誘う。(なんて美人なんだ。やっぱり騙されているのかも)澄男は、真由美を見て思った。こんな美人の人妻が、テレホンセックスで乱れるなんて現実的にありえない。きっと、関係を持ったら男が出てきて慰謝料とか、まずいことになるにちがいない。
「紅茶をお願いします。ホットで。」真由美が店員に注文する姿に、澄男は再び見入ってしまった。
薄いセーターの胸元が、大きく盛り上がっている。(電話では94センチと言っていたが、本当みたいだ)
「そんなに見つめられると緊張します」真由美が戸惑いながら言った。
「すみません。あの、真由美さんがあまりに美しいので、見とれていました」
「やだ、美しいなんて。お世辞」真由美がハンカチで口元を隠し笑った。(ああ、ハンカチで隠さずにその唇が見たいのに)澄男はそう思いながらも、自分の方が緊張していると感じていた。
「遅れてすみません。本当は、もっと怖そうな男性なら帰ってしまおうかと迷ってたの」
「いえ、構いません。私も半分は来てもらえない覚悟でいましたから」
「会ったりするの、初めてなんです」
「そうですか、実は私もツーショットで知り合った女性と会うのは初めてでして、いつものテレホンセッ……」澄男はセックスと言い掛けて、真由美が注文した紅茶が運ばれて来たので思わず言葉を飲み込んだ。
クスッ……焦る澄男の姿を見て真由美は微笑んだ。
「すみません危なかったです」澄男は冷めたコーヒーを一口飲み気を落ちつかせた。(真由美さんにひかれている。だがこんな魅力的な人妻がツーショットで会えるものなのか)澄男は世間話をしながらそう考えていた。(とりあえず喫茶店を出て歩いてみよう)真由美さんにも会ってお話しだけと約束して、出掛けて来てもらった訳だし。
「天気も良いし、少し散歩でもしませんか」
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