宮田三枝に呼び止められ足止めをされている間に、妻を取り囲み歩く男達の姿が見えなくなってしまった
(くそ!!従業員は何をやってんだよ!!あんなのどう見ても普通じゃないだろ…………な、なんだよ、頼によって‥ここだけオヤジばかりじゃないかよ…)
女性一人に10人以上の男が群がる‥誰が見ても正常ではない団体を…
誰一人気に掛けようとしない従業員達を見回すと…
これまで巡ってきたプールは皆‥同じTシャツを着た若い男女が殆どを締めていた従業員だったが…
この『さざ波プール』に限っては中年の男だけと言う事に疑問を感じながらも…
焦る気持ちにそれを深く考える余裕などなかった。
(とにかく、早く見つけなければ…従業員を呼ぶのはそれからだ…)
思い直し、慌てて周囲を捜すと…
男達の姿が遠くに見えた。
目立たぬようにしているつもりなのか…十五人程で妻を取り囲んでいた男達は、散らばりながら其々が同じ方向を向いて歩いていた。
その中心で二人の男が、妻を挟み込むようにして歩いている…
自分の妻が他の男達に‥
しかも、普通なら妻に指一本触れる機会など有り得ない、醜く肥えた体から異臭を放つ中年男が…
まるで我が物のように妻の肩を抱き、薄禿げの小肥り男が先導するのを私は追い掛けた。
(この先は?!トイレか?トイレに引きずり込もう というのか!?そんな事は絶対にさてたまるか!!)
愛する妻の身に重大な危機が迫っていると察し「おい!お前達」と男達を呼び止めようとした。
その時…
「ちょっとあなた!よろしいですか?」
私は警備員に呼び止められた…
「何ですか?!妻が…大変なんです!」
「嘘、言うんじゃないよ!あんたさっきからあのお客さん達を盗み見てたろう?! 盗撮でもしてるんじゃないのか?」
「そ、それなら‥あなたも見てたでしょう?!妻があの男達に悪戯されてたんですよ!」
「あ~?!あの人達はもともとそう言う仲間なんだろう?! それよりあんた、自分の奥さんだったら普通止めるだろ、おかしいじゃないか!」
なんと言う事だろう…私の妻を卑劣な手で弄んでいた男達が守られて、夫である私が責められるとは…!!
そうこうしている間に男達は‥さざ波ブールの裏手奥のトイレに通じる
L字型の通路に、妻と共に姿を消してしまった…
私はそれから入場口にある建物まで連れて行かれ、警備員から取り調べを受けた。
こうしている間に妻が何をされているのか……
いくら水中とはいえ、平然とこれだけの公衆の面前で、寄って集って‥か弱き女の体を我が物のように弄ぶ卑劣な変質者達だ!!
トイレになど連れ込まれられたら何をされてしまうのか…。
(なんでこんな事に…こんな事をしている場合じゃないんだ…)
焦る私に…警備員は一通り調べが終わると‥
「監視カメラを確認してくる…」
と言い残し部屋を出て行ってしまった。
建物一階角にある‥12畳ほどの室内に、出入口やチケット売り場 駐車場で見かけた幟や三角ポール ロープやネット等が、壁際に乱雑に積み上げられ…
空いた空間にテーブル一つとイス二つだけ置かれた、倉庫のようなこの部屋に私は一人取り残された。
この部屋から逃げようにも、窓は無く扉は鍵を掛けられてしまっている…
(綾子…どうか無事でいてくれ…お願いだ…振り切って逃げてくれ…頼む…)
虚しい願いに心は空回りするばかりだった…
(何やってんだ…早くしてくれ…)
いつまで経っても戻って来ない警備員に私の苛立ちは頂点に達し…
「いい加減にしろ!!早くしてくれ!!」
怒鳴り声を上げてドアを思いきり叩いた…
暫くすると、警備員が戻って来た…
ようやく私の盗撮などの嫌疑は晴れた。
が…「早く一緒に来て妻を助けてください!」と頼んでも
「まだ、そんな事を言ってるのか、早く帰れ帰れ!!」
と、まるで取り合ってもらえなかった。
私は無我夢中で『あのトイレ』に走った…
すると‥妻が連れて行かれたであろう、さざ波プール裏手にある『あのトイレ』に通じる通路の入口に…
【この先のトイレ使用出来ません】
とマジックで乱雑に書かれた立て看板があった。
(ん?さっきまではこんな看板なかっぞ…誰も居ないということか?!
いや‥念のため見ておこう)
私は看板を無視し、トイレへ向かった…
静まり返った通路を進みトイレに近付くにつれ、何人かの汗だくの男達とすれ違った。
いずれも女性と縁がなさそうな風貌の太った中年男や、骸骨のような禿げた中年男などだった。
(どう言う事だ!?使用禁止のはずじゃ…)
一瞬、不審に思った…
しかし、この男達には‥あの男達の中で私の記憶に鮮明に残る
特徴的なランニングの日焼け跡が無い事…
そして、『妻の肩を我が物のように抱きながら歩く醜く肥えた男』や『男達を先導する薄禿げの小肥りの男』や『プールで妻の胎内に指を埋めていた黒い水着の男』
その三人は居なかった。
なので…却ってそれらの男性達は‥私には普通の客の様に見え、安心材料に思えた。
(あいつら以外でも、これだけ人が勝手に出入りしているのなら…
きっと、何かあれば騒ぎになっているだろう…。そうでないと言う事は‥きっと綾子は逃げ切って無事だったのだろう…)と…
ただ、そうした男達とすれ違う時、安心とは似つかわしくない生臭い匂いがフッと鼻を掠めた。
しかし、(綾子は無事なはずだ!)
と言う気持ちが、その匂いが何であるかを私に考えさせなかった…
そう、後から考えれば‥何故か皆、汗だくに見えたその男達から臭ってきたのは…他ならぬ精液の匂いだった。
(念のため奥まで見ておくか…)
と、思い先へ進むと‥行き止まりにトイレのある建物が見えた。
(さすがに傍若無人なあの変質者たちでも、女子トイレは見つかれば直ぐ騒ぎになるだろうから入らないだろう…
とすれば、男子トイレか?!)
震える足で男子トイレの個室を全て見たが‥もぬけの空。
乱暴がなされたような後なども見受けられなかった…
(だよな‥使用禁止なんだから、誰も居るはずない!…よかった…きっと無事でどこかで休んでいるか、子供達の所に戻っているんだろう…)
と、ホッと胸をなで撫で下ろすと…
海パン一枚で冷房が効いた部屋の中、一時間以上 警備員に取り調べを受け待たされているうちに冷えたのか、腹を下し猛烈な便意が…
まだ、妻の無事を確認出来ていない不安を残しながらも、便意には勝てず用を足していると…
小便の便器の方から、用を足す音と男性二人の会話が聞こえて来た。
「あ~っ…まさか本当にヤレるとは思わなかったぜ…最高だな…」
「そうだな…初めてビデオ見せられて…こんないい女をヤラセてくれるって聞いた時には…騙されてるのかと思ったぜ…」
「ふぅ~たまらんな、あの女~!あの絡み付いてくるマンコ…ちんぽが蕩けるかと思ったぜ」
「ああ!あの顔にあのカラダ‥おまけにあの品のあるよがり声にはゾクゾクするわ…
この年になってあんなイイ女を犯れるとは思ってもみなかったぞ…」
「金を貰ってあれだけの女!しかも、人妻を抱けるなんて最高だな…おれにもツキが回ってきたぞ!」
「オイ!まだイケるか?」
「ああ勿論だ!社長に毎日精のつく物食わされて、10日もセンズリ禁止させられてよ~毎日悶々として狂いそうだったぞ…」
「俺もだ!…くくくっ…坂井…綾子…たまらね~ぜ!!ズコズコ突きまくって色ボケにしてやるぜ…イヒヒヒッ…」
「しかしアソコは暑過ぎるなぁ!まるで蒸し風呂だ…おい!あっちで水浴びてから戻るか!?今頃はマルさん達が犯ってんだろ?!あのオヤジは長いからまだまだ、廻って来ないぞ」
個室で息を殺し‥その会話を聞いていた私はハンマーで殴られたような衝撃を受けた…
(ビデオ?!どうして名前を知っているんだ…?!マンコ?!…色ボケ?!…無事じゃないのか?!!!まさか、もう綾子は汚されてしまったのか?!!!)
最悪の事態が頭の中を駆け巡り、不安でいっぱいになりながら息を潜めていると…
「おうっ!どうだ、上手くヤってるか?!」
もう一人の男の声が聞こえて来た。
「ああ社長!上手くヤってますぜ…ヘヘヘッ、社長の読み通りあの女‥旦那に満足してなかったみたいっすよ」
「おおっ、俺じゃねえんだが‥まあ、いいか、それでどうした…」
「へっ?!‥ああ、はい‥でね、最初囲んだ時はね‥何てゆーかな、気持ちでは嫌なんだけど、体が感じてしょうがねえって感じで、乳揉んで尻触ってマンコグリグリしたら‥もう乳首はビン立ち体をビクンビクンさせてましたよ…後は…何すか、あの塗る薬?!も効いてイチコロって感じで…ここに連れて来るまでフラフラだったんすよあの女…でもね、ここに連れて来てからが大変だったんすよ~!」
「どうした?何が大変なんだ?!」
「でもね、着いた途端に暴れ出したんすよ!!いや~!フラフラなくせに暴れるは暴れる…
んでね、仕方ねえから‥みんなで押さえつけて…」
「お前!!まさか、あの薬射ったんじゃねえだろうな…」
「すんません!でも、仕方なかったんすよ…」
「チッ!あれを使ったか~!で、どうだ?女は正気か?!」
「大丈夫っすよ!しっかし何すかあの薬?!あんだけ暴れてたのに…射ったら別人っすね!!自分から股広げて来ますよ!!イヒヒッ…もう、あの美人が俺達の『言いなり』っすよ!!」
「だろうな…あれを射ったら子供でもよがり狂うからな…たが‥弱いヤツに射つと、気が狂っちまうんだよ…そうなったら元も子もないだろ…
黒岩のオヤジに会わせる顔がないだろ…いくら貰ってると思ってんだ!!」
「すんません…でも大丈夫っすよ!!」
「ああ、頼むぞ…あっ!そうだ、尻の穴は無事だろうな?!」
「はい、もちろんっす!あんだけ言われたらやんないっすよ!」
「本当に頼むぞ…尻の穴はすぐバレるからな! 黒岩のオヤジはそれを一番楽しみしてんだから…あの女の尻の穴の処女を頂くって息巻いてんだからな…
あのオヤジを怒らせたらオレもお前らも終わりだからな!!」
「分かってますって~!ヘヘヘッ…」
「よしっ!じゃあ又夜来るからな…」
(薬を射った?!自分から…?!言いなり?!綾子はどうなってしまったんだ?!黒岩?!あの黒岩なのか?!
社長!?誰だ?!何処かで聞いた事のある声だ…何処で?!誰何だ?
綾子…何処に居るんだ!?)
早口で捲し立てる男に対し、低い声で偉そうに話す男…その会話を聞き、私はもうパニック状態になっていた。
男達の声が聞こえなくなり…
私が男子トイレを飛び出し耳を潜めると…
「んくっ‥んあっ‥あぁん‥」
啜り泣きの様な、くぐもった女性の声が微かに聞こえて来た。
私は全身総毛立った…
あの鼻に掛かった控えめな喘ぎ声は‥妻の、妻独特のあの時の声だった…
※元投稿はこちら >>