来賓の挨拶も終わり、散らばり始める参加者の列…
その中で妻は‥先程までと同じようにキャップで尻を隠すようにしながら、先を行く息子の後を歩いていた…
プールサイド下に消えていく妻と息子…
そして、親子水泳大会子供の部の競技が始まり、少しするとトレーニングウェア姿の妻が観覧席に座る私達の所に現れた…
「恥ずかしい…やっぱり小さかったよ…水着…」と
困り顔で話す妻の言葉に
「仕方ないよな…少しの辛抱だよ…」
と平静さを装おい応える私だったが…
(やっぱりそうだよな…あんなに尻肉をはみ出してたら…他の男に見られてしまうなんて、俺の方が嫌だよ…棄権してくれなんて言えないしな…)
内心は憂鬱で仕方なかった…
それから私と妻次男の三人で競技を観戦していると、カメラを持ちプールサイドを動き回る『STAFF』と書かれたTシャツを着た男女の姿が…
妻に聞いて見ると「各クラブのホームページやブログに載せるみたいよ…」
との応えに…「そ、それじゃ…綾子も撮られたりしちゃうのか?!!」
妻の水着姿を見られ撮られる事に過敏になっていた私が慌てたように問うと
「そんな訳ないでしょ…ない‥よね?!やだぁ…ないよ…」
と不安気に応えていたが…
長男の出番に気をとり直すように…
「佑樹~!頑張れ~」大きな声で長男に声援を送る妻
「すご~い!?佑樹頑張ったよね~」
残念な結果には終わったが、スイミンクを始めたばかりの長男の頑張りに、興奮した様子で話す妻に笑顔が戻っていた
そして、【保護者の部に出場される方は…】とアナウンスが流れると…
「じゃ、頑張ってくるね…」と笑みを浮かべながら去って行く妻
しかし、それを見送る私の心中は穏やかではなかった…
(はぁ…出るのか…さっきと違ってスタート台なんかに立ったら、唯でさえ注目されるのに…隠す事も出来ないし…男達の卑猥な視線が集中してしまうじゃないか…)
鈍よりとした気分になりながら、ぼーっと競技の進行を眺めていると…
(ああっ…とうとう来たか…あっ?!頼によってまたあそこか…)
スタート台の後ろに並ぶ10人の母親達…
妻は一番端の10コース‥あの最前列からカメラを隠し持つ男のほぼ正面だった
しかも、自らの尻を隠すように持っていたスイムキャップは、被っている為
剥き出しの尻を隠す事が出来ない…
妻が登場した途端に慌ただしくなる男の動き…
(まずいな…早く終わってくれ…)
【1コース…○○スイミンククラブ○○○○さん……】
焦る私の気持ちを嘲笑うかのように選手紹介のアナウンスが流れる中、観覧席上段寄りにポツンと座るあの男達の内二人に動きが…
(あっ…ああっ、やっぱりか…)
一人が鞄からカメラらしき物を取り出し膝に乗せ、それを鞄で覆い隠すようにしてチラチラと覗き込んでいる
もう一人は膝に乗せた鞄の口を大きく広げ、手を差し込んだまま中を覗き込んでいて‥その鞄の先端からキラリと反射するガラス状の物が確認出来た…
(盗撮だ…間違いない!…どうする?!とうしたらいいんだ…)
もし盗撮だとしても妻が狙われていると言う確証はないのだが、下へ前へと忙しなく動く男達の視線が妻へ集中していると確信しながらも、どうする事も出来ずに苛立っていると…
【10コース○○スイミンククラブ‥坂井綾子さん…】
(ええっ!!頼によってフルネームかよ…勘弁してくれ…)
開場に流れるアナウンスによって、妻に卑猥な視線を浴びせ盗撮する卑劣な男達に、水着姿だけでなくフルネームまでをも知られてしまった事に頭を抱えていると…
開場に鳴り響くスタートの合図が…
初めて見る妻の『本気』の泳ぎ…
しなやかに躍動する妻の体に…あの男達の事などすっかり忘れて釘付になって見ていると‥
他を寄せ付けない圧倒的な速さに開場から響めきが…
ぶっちぎりの一位に沸き上がる開場からの拍手の中
息を切らせながら水中で水着の乱れを直す仕草の妻
(そうだよな動いたら食い込んじゃうよな…撮られてるぞ、上がる時気を付けてくれよ…おおっ、さすがだ…)
水着を直す妻の仕草を見て、直ぐにあの男達の事を思い出し、心配しながら見ていると…
プールサイドに両手を付き、勢いを付けてジャンプした時に一瞬だけ見えた妻の濡れた尻にドキッとしたが、そこからクルッと体を回転させプールサイドに腰掛けてから立ち上がる、淑やかな所作に感心していると…
(ああっ…こんどはこっちか…あんなに近くから…エロオヤジどもが…見るんじゃねえ!)
レースが終わり退場口へと来賓席の目の前を歩く妻を目で追う、いい年をしたオヤジ達のだらしない顔に苛立つ私だったが…
(あれは…?!会長とか言うやつ…だよな…なんだよ!馴れ馴れしいな…綾子に気安く触るんじゃねえよ…)
退場口の所で妻に話し掛ける黒岩の姿が目に入った…
先程の宮田三枝の話を聞いていた事もあり、気色悪い微笑みを浮かべながら、妻と握手をし肩を叩く黒岩に怒りを感じながら注視していると…
退場口から消えて行く妻の後ろ姿を長々と見つめた後、隣に居るSTAFFとプリントされた黄色いTシャツ姿の中年男に何やら耳打ちをする様子が目に付いた…
(なんだよ、気味悪い…どうせ卑猥な話でもしてるんだろ…あ~気分悪い…散々だな今日は…)
『気味悪い』『卑猥な話』で済めば幸せだったかもしれない…
後に、この黒岩によって私達夫婦が引き裂かれてしまう事になるなど‥知るよしもない私はこの男をただの‥気に入らない好色な中年男だとしか思っていなかった…
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