ホテルは弘と使っているホテル
車を無言でおりた私にゆっくりながらも追従してくる、ありさ。
このホテルは何度も何度も、弘と使っているのだろう。当然このホテルにしたのは弘のことを思い出させるため。
部屋に入り、ソファーに座ったていたありさに、私は言った。
「今からビデオ撮影します、出て行くなら今のうちです。ここからはすべて撮影され、依頼主である奥様へ送られます。今日の課題を17時までに行わなければ結果は①になりますよ、いいですか?」
「・・・」無言のありさ。
たぶん、何も考えられないのだろう、yes.noではなく精神的に病んでいる顔しているのがわかる。
「今の時間は11時半。あと5時間半あります。今から私と4つの事を行わなければなりません。いいですか?」ビデオの三脚を立てながらカメラをセットを始めている。呆然としながらありさはそれを見ていた。
ありさにカミソリとシェービングクリームを渡し、バスルームで剃るように勧めるがいっこうに動かず。それどころか呆然とし、動かない喋らない反応しないありさに段々と腹を立て始めてきた。
「・・・ありささん、残念ながら貴女には依頼主の言うことがわからないようですね、このままこの部屋を出て家に帰ってください」少し強い口調で言い、せっかくセットしたカメラや三脚を片付け始めた。それでも一点を見たまま動かない。
カメラを完全に仕舞い部屋を出るようにありさを即すと「・・・すいません」蚊の鳴くような声で一言いい「・・・帰れない・・・このまま帰れません」目から涙が流れた。
反応したありさを見て、内心よかったって思ったが強い口調のまま「なら、どうします?もう片付けてしまいました。自分の立場たわからない貴女とノンビリここにいるつもりはないです。帰りましょう」帰り支度を整え荷物を持った。
「・・・すいません・・・申し訳ありません・・・お、お願いします・・・帰るなんて言わないで・・・」完全に泣き顔。「ならどうしたらよいと思う?」強い口調でありさに自分で考えさせ自分の口で言わせたかった。少し戸惑いモノを言いたげだが声は発しない状態が続きそれでもなんとか言った言葉があった。
「・・・毛を剃る‥」小さな小さな声で一言だった。
「わかっているなら何故動かない、動かないなら帰ろう、時間の無駄だし、依頼主も待っている。今の時間帰れればまだ子供と最後になるかもしれないが遊びに行けるかもしれませんよ?貴女が選んで此処に来たのではないか?違うなら帰りましょう!」怒鳴るように・・・怒りながら言った。普段の私は怒ることがない、いや怒る感情を外に出したことがほとんど無い、怒りの感情表現がうまくいっているかわからないが、逆にかえって本気で怒っているのかと思えたのかもしれない。
「・・・すいませんでした。あの・・・剃っていただけませんか...?」ボロボロ涙を流しながら精一杯の言葉。
「ん?俺に剃れって言うの...?」
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