落ち着いた頃には夕方になってしまった
「紅茶、いれますね」
彩花さんが紅茶を入れてくれた
私はまっかになった目をふいている
顔を洗って鏡を見る
ずいぶんと老けたな
美しかったのは遠い昔
机に用意された紅茶を飲んでため息をついた
「バカな女のバカな話です。聞いてくれますか?」
彩花さんは静かに頷いた
今までの事を全て話した
どろどろとしたドス黒いうみを全て
彩花さんは黙って聞いていてくれる
「結局、私の自業自得です。新しい命にも罪を追わせしなせてしまった」
「・・・・・・」
「・・・・もう、終わりなんでしょうかね」
「弟さんとの事、私がどうこう言うつもりもないです・・・・ただ」
「・・・・?」
「生きてください」
「もう苦しみしかない」
「それでも生きてください・・・・貴女には残っているものがあるでしょう?」
彩花さんがパンを一つつまんだ
弟と必死で頑張って作り上げた小さなお店
「待ってくれている人もいますよ」
「・・・でも」
「"人"という字はどういう風に成り立っているかご存じですか?」
「え?ささえあって・・・できてるんじゃ?」
「いえ、人と言う字はささえあっているのではなく、一人の人間がふんばってたっている姿の象形です」
彩花さんは私の手を握った
「たしかに、いきるためには人と人とが支えあわなきゃいけません。ただ精神的には自立して踏ん張ってなきゃいけない。生きていれば出会いと別れの繰り返しだから」
「・・・・・」
「・・・・愛しい人がいなくなっても生きねばなりません。苦しいのも生きているから味わえる感覚なんですよ」
「・・・・・」
「私も、弟がいます。貴女と同じ、恋仲です」
「!?」
彩花さんがさらにぎゅっと強く手をにぎってくれる
「生き別れでした、再開する時期が遅かったら私は貴方の弟さんと同じ事をしていたと思います、きっと」
「きっと辛い人生になりますよ」
「はい覚悟はしてます。二人で同じ道を歩き。弟が先に無くなったとしても私は生きていきます」
「どうしてそんなに強くいられるの?」
彩花さんが苦笑した
「人はずっと一人だと昔から思ってたからかな・・人が、一人しっかりと強くなければ本当の意味で支え合いなどできないし助ける事もできない、性別も関係ない」
「・・・」
「私は弟を助け、育て、立派な男にする事ができました。これからようやく支えあう事ができます」
私とは覚悟が違う・・圧倒的に
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