夫の胸ぐらをつかんでにらみつける
言わなくても分かるだろう・・・
「ご、ごめん」
「何してんのよ」
「いや、かわいかったから・・・」
「あ"?」
「ご、ごめんって言ってんだろ!」
「もういい・・・」
こういう事はよくある
彼は女好きだもん・・・
夫に背を向けると
すぐに後ろから抱きついてくる
「ごめんって・・・姉さん」
「もういいよ・・・ほら、明日の仕込みの材料買いに行こう」
「うん・・」
陽太を連れて二人で手を繋いで買い出しに向かう
もう二人ともすっかり夫婦だ
「お母さん、蝶々がいるー」
「うんうん、そうだね」
「お父さん、つかまえて!」
「ほいほい!」
陽太と夫が蝶々を追いかける
ひらひらと舞っては二人の手から逃げていく
二人は夢中で追いかける
陽太が道路に飛び出た
「陽太、危ない!」
夫が陽太を抱き上げるが
・・・・
ビーっ!
クラクションが鳴り
大きなトラックが二人を消した
トラックが止まり
運転手が出てきた
呆然として動けない
いつか起こるんじゃないかと思ってた報いが・・・・やってきた
そうだよね
夕貴と舞になにも告げずに裏切ったんだから
心のどこかで覚悟はしてた
道路に近寄る
血が河のようになっている
よろよろと歩いて
視界を向ける先は
血の河の源流
そこには二人の・・・・
数週間
脱け殻のように部屋で横たわる
何をしたらいいのか分からない
お骨はある
ただ葬式なんかできるわけがなかった
だって姉弟だもの
そして二人の間に生まれた子
認知なんか許されない
世界の理を壊して生まれた子
誰にも言えない
ひっそり暮らしていたつもりだったけど
世間から孤立してしまっていたのかもしれない
ピンポーン
店の方はずっと閉めたままだ
誰だろう・・・
玄関を開けた
彩花さん・・・
「あの・・・お店開けないのでしょうか?何かあったのですか?」
「・・・ええ」
久しぶりに人と話すような気がする
「取材・・・どころじゃなさそうですが、なにかあったんですか?」
「報いが来ました・・・」
「え・・・・・?」
「夫と子供が亡くなりました・・・」
その場に崩れ落ちるように座りこんだ
ずっとこらえてた涙が溢れてきた
彩花さんがしゃがみこんで優しく抱き締めて包んでくれる
「気が済むまで泣いてください。私はこうしてます」
彼女に言われ、妙な安心感を感じたが
涙は止まらなかった
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