私には両親がいない
育ててくれたのは父方の母、お祖母ちゃんだった
父さんと母さんがどこに行ったのかは知らないし知りたくもない
久しぶりに夕貴と二人でお祖母ちゃんの家を訪れた
「あら、いらっしゃい」
お祖母ちゃんはまだまだ若々しい
64歳にもなるのに近くのお弁当屋でバリバリ働いている
「夕貴もお久しぶりねぇ」
「ご無沙汰してます!」
お祖母ちゃんはなんとなく私と夕貴が結婚するだろうなって悟ってたらしい
「薫も前よりきれいになったわね」
「えー、、そんな事ないよ」
「あの子らが貴女を置いてどこかに行ってしまった理由が分からないわね」
「父さんと母さんか・・・まったく覚えてないなぁ」
お祖母ちゃんがすこし黙って、うつむいた
「薫・・・あのね」
「ん?」
「大分前に手紙が届いたの・・・貴女のお父さんとお母さんからよ」
「え?」
お祖母ちゃんは小さな封筒を机の上に置いた
「読んでいい?」
お祖母ちゃんは静かに頷いた
封筒を開けて手紙を開いた
【母さん、お元気ですか?私たちは元気です。薫を捨てて母さんの側を離れて暮らす事を選んだ僕たちをまだ許してはいないでしょう。薫はもう中学生くらいでしょうか?実は僕と妻の間にまた新しい命を授かる事ができました。薫の4つ年下の男の子です。会わせる事は許されないでしょうが、薫と弟をいつか会わせてあげれればと思っています、お元気で、いつかまた】
弟・・・・?
「薫に弟が・・・」
夕貴もキョトンとしながら手紙を読んでいる
「弟・・・どんな子だろ?」
「今となっては何も分からないよ、息子から連絡は途絶えたし・・・さ、夕飯食ってくかい?」
「あ、うん♪」
お祖母ちゃんの料理ができるのを待つ間
私は縁側に座って庭を眺める
まだ肌寒い
小鳥が小枝に止まって私を見ている
「薫?」
「ん・・夕貴」
「弟・・気になる?」
「んー、正直分かんない、いきなりすぎだし」
「だよね・・」
夕貴と寄り添って座る
私にとっては兄弟同然の人
夕貴がいちばん大好き
浮気・・・やめられるならやめたい
けどどうしてあんなに肌が合うのか
まるで麻薬のようだ
御山君から早く離れたい
携帯が鳴って
画面を見る
御山君からだ・・・
私はそっと電源を切って
また夕貴に寄り添った
「電話、出なくていいの?」
「うん、夕貴との時間を邪魔されたくないからね」
「へへ、、、」
夕暮れ・・
昔は二人で遊んだよね
夕暮れ時まで二人で・・・
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