彼の怪我はたいした事はなかった
運転は彼がしてくれて
とりあえず彼のアパートへ
まだ夕貴が帰るまで時間がある
こんなに動揺してたら何か感づかれてしまう
御山君がコーヒーをいれてくれたけど飲む気にはならない
「包丁振り回す先輩もかわいかったなぁ」
「・・・なんで?」
「へ?」
「なんでそんなに笑っていられるの?」
私は震え声でなんとか喋った
御山君は少し真面目な顔になった
「それが日常的にあると慣れて平気になるもんですよ、喉元にナイフ突きつけられる日々を送るとそれにも慣れちゃうんです」
「・・・両親はどんな人だったの?」
「どんなって?今言ったような事をする、そんな人たちですよ」
御山君はコーヒーを飲んでふぅっと息を吐いた
「俺は嘘つきで愛想を振り撒く悪魔みたいな男です」
「・・・・」
「今まで話した事も全部嘘かもしれませんよ?」
「・・・・お姉さんの事も?」
「・・・姉さんだけは嘘じゃないです!」
少し私をにらんだ
こんな表情は初めて見た
「殺人未遂は犯罪ですよね?」
「う・・」
「先輩、警察に言われたくなかったら旦那さんと別れて俺の女になってください」
彼の目がすこしうるんでるのに気がついた
謎だ・・・この子はなんなんだ
惹き付けられてしまうのはなぜなんだろう
しばらく間があってから彼がまたへらへら笑った
「なーんてね、俺は性欲処理の奴隷ですもんね」
「・・・もう・・終わりにしよ?」
「先輩が望むなら」
「怪我・・・ごめんね」
「怪我くらいなんともないです」
帰宅して、ソファーに座る
もうおしまいにした
もう・・・終わり
夕貴だけを見ればいい
ずっと、ずっと
夕貴だけを・・・
夕貴が帰ってきてすぐに抱きついて
すぐに寝室に誘いえっちした
すごく安心するのに
なんでか・・・もう
御山君と比べて不満ばかりが頭に浮かぶ
全然イけない
下手・・・下手なの
肌と肌が混ざり合うような感覚がない・・・
もう、彼とは終わったんだから
御山くんの事、忘れなきゃ・・・
二週間くらいして
仕事をしながら彼を見つめている
彼がほしい
ほしい・・・・ほしい
念のため、妊娠検査薬を何度か使ったけど
大丈夫だった・・・
ほしい・・・ほしい・・・御山くん
そんな願望が頭の中にいっぱいになった
しばらくして彼が些細なミスをやらかした
私は叱りつけるために備品倉庫まで彼を連れて行った
「すみません、、」
二人きり・・・・落ち込む彼の頬に触れ
そっとキスした
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