その後もしばらく酒盛りは続きましたが、時計が深夜2時を指す頃にママ達の眠気もピークに達したのか誰からともなく寝る準備をし始めました。
私が爆弾を落としてからの純子さんは心ここにあらずのような状態で笑顔もどことなくひきつっているようにも見えましたが、私はそんな純子さんに満足感すら覚えていました。
ママ達は妻のスウェットやパジャマを借りて化粧を落とし始めました。
私は純子さんが化粧を落としに洗面所に行ったのを確認し、タイミングを見計らってトイレに行くふりをして純子さんのあとを追いました。
洗面所で洗顔をしている純子さんに小声で
「さっきはすみません。」
と声をかけると一瞬ビクッとしてから明らかに私に対して警戒心を漂わせながら
「何のことですか?」
と純子さんが聞き返してきました。
私は無言でスマホを操作して隠しフォルダにある霊園の駐車場で停まっている純子さんの車の写メと公園の駐車場に停まっていたAの車の中にあった純子さんの服と鞄の写メをスライドさせて純子さんに見せました。
私は初めて人の顔から血の気が引くのを目撃しました。
お酒で赤らんでいた純子さんの顔が一瞬で青というより真っ白になったようでした。
「…なんでこんな写メが…」
そう呟いてから白から一転して怒りで顔を真っ赤にした純子さんが私を睨んできました。
私は純子さんの気迫に一瞬たじろいでしまいましたが、
「誤解しないでください。悪いようにするつもりはありません。できれば2人で話す機会を作ってもらえませんか?」
と慌てて言いました。
純子さんはこちらを睨んだまましばらく考えていたようですが
「…話すことなんかありません!」
と言い捨ててそそくさとリビングに戻って行きました。
残された私はトイレに籠り自分の失態を悔やみました。
写メさえ見せれば黙ってこっちの言いなりになると思っていましたが、状況は正反対になってしまい逆に妻に私が純子さんに言い寄ったことを告げ口されてしまうかもと不安にすらなってしまいました。
リビングに戻り眠たそうに後片付けをしているママ達に
「私が適当に片付けしておくので先に休んでください」
と告げるとママ達は口々に、ありがとうやいい旦那さんねーなどと言いながら子ども達が寝ている部屋に向かいました。
妻もかなり眠気の限界だったのか、ごめんねとだけ言ってママ達と一緒に移動していきました。
純子さんは一度もこちらを見ることも口を開くこともなく行ってしまいました。
私はガランとして散らかったリビングを片付けながら、どうにかして純子さんが妻に告げ口しないフォローを考えていましたが、酔った頭と先程の純子さんの睨んだ顔がちらついてまともに思考できずに一人で2階の夫婦の寝室に向かいました。
布団に入っても後悔や不安ばかりが頭をよぎりなかなか寝付けずにいました。
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