それは私が会社から帰宅途中に起きました。最寄り駅につき、改札にいたる階段を
降りようとした時に、私は誰かに背中を強く押され、そのまま前のめりに階段を転げ
落ちてしまいました、幸か不幸か、私の近くには人がいなかったので、他人を巻き込む
ことは免れたのですが、その代わり、私は約7mほど転げ落ちたことで、足首と鎖骨を
骨折してしまいました。もちろん、この件は傷害事件として捜査されましたが、私を
押した犯人を特定することは、とうとう出来ませんでした。私は、その後、手術を受け、
約1ヶ月間の入院生活を余儀なくされたのでした。とりあえず手術は成功したものの、
私は不自由な生活を強いられました。当然、今までのように自宅へ電話をかけることも
ままならず、私にとって、入院生活からくるストレスは日に日にたまる一方でした。
そんな時、唯一の救いは毎日のように見舞いにきて世話をしてくれる妻でしたが、そんな
妻にさえ、イライラした気持ちをぶつけてしまっていました。
入院して半月たったある日、いつものように見舞いに来る妻が、その日は面会開始の
午後3時になっても姿を現しませんでした。いつもと違う状況に私は妙な胸騒ぎを覚え、
車椅子に乗り、病院の中庭から自宅に電話しました。しかし、何度ならしても、妻が
電話口にでることはありませんでした。今まで、一度としてこんなことはありませんでした。
私の胸騒ぎはさらに大きなものになってきました。「まさか・・・」私は車椅子に座りながら、
必死に自分を落ち着かせようとしていました。そして、冷静に昨日の妻の様子を思い返して
いました。しかし何度、振り返っても、昨日の妻は、子供たちの夕食の支度をしてこなかったと
いうことでいつもより早く帰りましたが、特段、変わったところ、気になるところはありません
でした。私は仕方なく、病室に戻りました。しかし、いくら待っても、妻からの音沙汰は
ありませんでした。私は、次第にイライラしてきました。1時間経ち、2時間経ち、時計の針が
午後5時をまわった頃、妻がようやく病室に姿を現しました。私の顔をみたその表情は曇っていた
ように思います。
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